寿司を大衆の食べ物にしてくれた、寿司ロボ:鈴茂器工の新たな舞台
2022年1月26日 16:03
かつて飛び込んだ町の寿司屋の値札には、「時価」と書かれた品が少なくなかった。「並み1人前」、せいぜい「赤身とイカとタコ」くらいしか注文の仕方がなかった。そんな事態に革命をもたらしてくれたのが、回転寿司。いやもっと正確に言えば鈴茂器工(ジャスダック)が開発した、世界初の「寿司ロボット」の存在だった。寿司ロボットの普及が回転寿司屋のチェーン化を進め、寿司は「特別の時に食べる、高いもの」から解き放された。
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鈴茂器工が寿司ロボットの第1号を開発したのは1981年10月。私が三十路入りした直後のことだった。
昨年『スシローが魚が取れない時代の新戦略 その行方は』と題する記事を投稿した直後に、「鈴茂器工はいま、どんな立ち位置にあるのか」が気になって、調べなおしてみた。
鈴茂器工は1961年に、故鈴木喜作氏により設立された。製菓機械のメーカー。具体的には「最中あんこ充填機」などを造っていたという。最中にあんこを入れる機械・・・企業文化継続の妙を覚えた。そして記したように寿司ロボット開発後、その改良・改善の道を歩み今日の礎を築いていった。
前3月期で手掛ける商品の売り先は(国内向け)売上高比率でみると、「スーパー:36%強」「寿司屋:25%弱」「工場・給食向け:14%弱」「レストラン・食堂:11%弱」「テイクアウト・宅配:11%弱」という具合だ。
ちなみに前期でみると、総売上高の23.4%を海外が占めている。健康食=寿司が背中を押している結果だ。
寿司ロボット開発に関しては、「寿司職人がシャリを握る一連の動作の研究を重ね、つまんで崩さず口に含んでほぐれる食感」を追い求めたという。言うは易いが行うは難い。寿司ロボットと並行し詳細はHPで確認してもらうとして、「ご飯」に関する幾多の機械を開発している。無論、回転寿司チェーンの厨房では寿司ロボットがシャリを造り続けている。
そしていま、1月5日の日経XTRENDの表題を真似れば【すしロボット40年の進化 厨房の「裏方」から表舞台へ】―恐らく世界初の商品を世に問うている。
後述する中計にも「拡充商品」として掲げられている、ご飯盛付けロボット(Fuwarica)などはその好例。社食・食堂・ホテルなどが主な納入先。盛られたご飯の量に、「こんなに沢山は食べられない」「これじゃ少なすぎるよ」といった体験を持つ人も少なくないのではないか!?―そこでこのロボットには「少・並・中・大」or「●g、■g、▲g、★g」といったボタンが据え付けられ、ご飯の量を選べるといった具合だ。
この間の収益動向は、盛り返し基調。至る2025年3月期の中計は、「売上高150億円(21年3月期比58%強増収)、営業利益22億5000万円(2.5倍弱増益)」を謳っている。
手にシャリを握りしめて動向を見守りたい、いや期待したい。(記事:千葉明・記事一覧を見る)