タカラバイオの「試薬」「PCR法」の足跡と、「遺伝子治療薬」の足音
2022年1月24日 16:15
宝ホールディングス傘下のタカラバイオ(東証1部)の好収益が際立っている。前3月期の「33%増収、122.4%営業増益、149.9%最終増益、8円増配16円配」に続き今期は、「9.6%増収、0.3%営業増益、最終増益」としっかりで立ち上がったが中間期開示と同時に上方修正。「41.5%増収(593億円)、43.3%営業増益(200億円)、47.7%最終増益(141億円)、8円増配24円配」計画とした。ちなみに中間期実績は営業利益で修正計画の既に7割強に至っている。
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絶好調の背景は主力「試薬」の需要増。中間期の総売上高:315億5100万円に対し259億6600万円(前年同期比2倍近い)を計上している。ここ数カ月間のニュースリリースを見ても「試薬」好調の内容が容易に読み取れる。
『2020年10月に既に日本では製造販売承認を得て発売している新型コロナウイルス用PCR検査キットを、本年10月4日より欧州でも発売する』(21年9月28日)、『新型コロナウイルスのオミクロン株に特徴的な変異を検出するPCR試薬の発売予定を早め12月28日とする』(12月27日)。
タカラバイオと「試薬」「PCR」との関りは長い。
1970年代、寶酒造は焼酎・清酒・みりんに次ぐ第4の事業柱を模索していた。時まさに米国で遺伝子組み換え技術が発明され、日本でも普及がまさに始まったタイミングだった。が、遺伝子組み換え技術の実践には遺伝子を組み換える(加工する)専用試薬が国内では入手困難で、輸入に頼っていた。
「これを商機と捉えた」(広報・IR部)。専用試薬の開発を行い79年に国産初の製品を発売したのである。遺伝子を扱う際に必須の技術であるPCR法も然り。遺伝子情報を有するいわゆるDNAを複製・増幅させるシステム。88年に国内で初の販売に乗り出している。
タカラバイオの目下の収益柱は「試薬・活かす理化学機器」と「その受託事業」。ちなみに2002年に寳酒造が持ち株会社化(宝HD)し、傘下の1社となった。
後述するが「バイオ創薬技術開発⇔遺伝子治療などバイオ医療」が今後の収益力を左右する分野として注目されている。
事実、中間期決算後の決算説明会でアナリストの間でこんな遣り取りが行われている。
Q: TBI-1301(遺伝子治療薬)の申請遅延の理由は?
TBI-1301はガン患者から採取したリンパ球(T細胞)に、がん細胞を特異的に認識するTCR(T細胞受容体)遺伝子を体外で導入し倍増によって増殖させ、患者に輸液する治療薬。
A: 申請書類の準備に手間取っている。時間を経れば解決すると認識している。製造の品質や治療効果が問題となっているわけではない。
Q: 新しいTBI-2001に注力としたが、その理由は。
A: がん細胞を認識し、抗腫瘍効果の持続期待、再発問題を解決する可能性があるという認識からだ。
Q: 遺伝子事業の収益化の方針。
A: 製薬でなく創薬を目指している。遺伝子医療プロジェクトの提携、技術ライセンス、試薬製品や受託サービスで機会を求める。
タカラバイオの足元と今後の展開から、目が離せない。(記事:千葉明・記事一覧を見る)