円安の流れ・背景に、田中角栄・福田赳夫コンビならどう立ち向かうのだろうか!?
2022年1月18日 11:20
昨年12月28日の朝日新聞「朝ニュースレター」で、「実効レート」なる文言と久方ぶりに出会った。図表付きのタイトルは『円の「購買力」を示す実効レートは約50年前と同じ水準に』。
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円安が進んでいる。昨年の東京外国為替市場の初値は、(対ドルで)103.20円。今年は115.08円で始まり、116.34円まで円が売られ本校作成中のレートは114円台半ば。円安トレンドの背景、そしてその弊害は多々論じられているので省く。
が、フッと思い立ち、押し入れの中に眠っていた「ダニが湧いているかもしれない」1冊を持ち出してきた。『福田赳夫・回顧九十年』(岩波新書刊)。
大蔵大臣(現:財務大臣)だった時代の故福田蔵相が、田中角栄首相の下で起こった急激な円高(1977年の年平均値269円が、78年には210円)に対する施策(総需要抑制管理策)を振り返って綴った1冊である。僅か9カ月の間に幅にして4.75%/計5回の公定歩合引き上げに象徴されるように、「国民生活安定緊急措置法」「石油需給適正化法」など「物価安定」「省資源・節約」を狙った法施行が相次いだ。
私がハッと思い古書を引っ張り出してきたのは、福田蔵相の一任で成せる業ではない。田中首相との間で、施行に当たりどんな遣り取りがあったのかを確認したいと思ったからだ。結論から言えば、古書には福田蔵相の「高度成長期は終わったのだ」という強い認識と田中首相の「思いきりのよさ」が滲み出ている。以下の様なくだりがある。
『田中首相は「(第1次)オイルショック(73年)でこうなったのだろう・・・」と言うから、私は「そうじゃないんだ。あんたは石油ショックと言うけれども、あれは追い打ちだ。あんたがかかげた日本列島改造論(72年)で昨年7月に内閣をつくって以来1年しかたたないのに、物価は暴騰に次ぐ暴騰で、国際収支が未曽有の大混乱に陥っている。(日本列島改造の)旗印に象徴される超高度成長的な考え方を改めないかぎり、事態の修復はできない」と説明した。しかし彼は、「そうか、では旗を降ろす」とは言わない。「明日、また会おう」ということで、翌朝また首相官邸であったところ、彼は今度は非常に割り切っていて、列島改造論を撤回すると約束した・・・』
結果、74年度は戦後初のマイナス成長となった。
だが「物価が上昇したのは、日本は資源がない国だからだ」という認識が高まった。省エネ・省資源の気運が一気に高まり「資源の節約はエレクトロニクス化・メカトロニクス化」につながり、以降日本経済はハイテクの世界につき進んで行った。
果たして田中・福田コンビなら、急襲する円安をどう捉えどんな対応策を執るのだろうか・・・。
現政権でも微妙な意見のすれ違いが見受けられる。岸田文雄首相は「経済再生最優先」で、財政再建は後回しの姿勢を明らかにしている。財政出動を進めている。対して鈴木俊一財務相は「親父(故鈴木善幸元総理)時代に比べ国債の残高が10倍以上増加している」と危惧を表明し、「経済の拡大のペースをはるかに上回るスピードで財政の悪化が進んでいる。経済活性化の取り組みと同時に、財政再建も不可欠だ」と訴えている。
果たしてご両者は、田中・福田両氏のように腹を割って話し合ったことはあるのだろうか。為替も相場。が、この円安の進み方は、決して尋常ではない。(記事:千葉明・記事一覧を見る)