IoT事業&CF事業でみせる、タスキの差別化戦略
2022年1月4日 07:48
投資雑誌:株主手帳が開催したZoomミーティングでタスキ(東証M)の柏村雄社長を取材する機会を得た。参加の打診を受けた際、「是非」と判断したのは足元の収益動向だった。
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前2021年9月期の「30.8%増収、116.0%営業増益、26円増配の52円配」に続き今期も、「41.5%増収(130億円)、23.1%営業増益(15億4000万円)、4円増配56円配」計画で立ち上がっていた。新興市場の成長企業の内容を覗き、トップに諸々聞きたいと思ったからだ。
タスキは新日本建物の社内ベンチャーとして生まれ17年に独立した履歴の企業。
目下の主軸は、IoTレジデンス事業。各省庁の発信データに基づきタスキが作成したところでは、日本の世帯の純金融資産をピラミッド型に例えるとこんな具合。「超富裕層(純金融資産5億円以上):市場規模97兆円」「富裕層(1億円から5億円未満):236兆円」「準富裕層(5000万円~1億円未満):255兆円」「中流層(3000万円~5000万円未満):310兆円」「一般層(3000万円未満):656兆円」。
柏村氏は「3億円を中軸に富裕層をターゲットに、都23区・駅近徒歩約5分の物件を相続対策として提供している」とした。「何故」という問いには、「上場企業の大方はIoTレジデンス事業を、超富裕層をターゲットにしており差別化が図れる」と言い切った。
確かに新築投資用IoTレジデンスは、不況下でも空室・家賃下落リスクが低い。そんな市場に、記したような差別化策で注力しているというわけだ。
そんなタスキが、新規事業にも進出。そこでも差別化策を打っている。
1つはクラウドファンディング事業。既に第1弾が組成されている。年収800万円前後の個人投資家を対象に、1口10万円から可能という枠組み。現状、利回り10%を実現している。柏村氏は「金融機関からの資金調達と投資家・タスキの優先・劣後出資による、ハイブリッド型」とした。要は、オフバランスによるミドルリスク・ミドルリターンを求めるクラウドファンディングの実行というわけだ。
1つはZoomミーティング直後に公にされた、不動産テック事業に向けた強力な武器。既に12月14日の企業・産業欄で三部朗氏が記しているが・・・地図上で活用計画がある土地を選択するとAIが、「土地情報の自動収集」をし「データ分析⇒最適な建築プラン⇔事業収支表を自動作成」する。全てスマフォ操作で可能。2月を目途に不動産業者向けサービスとして提供するが、まずは自社で運用を始める。IoTレジデンス事業、クラウドファンディング事業にも有効なものとなろう。
柏村氏は「今後とも配当性向35%超を維持する」としたが、本校作成中の時価は昨年初来高値から3割近く下値にある。収益動向を見定めつつ、キャピタルゲイン+好配当利回り(1.7%強)の二股狙いは欲張りすぎだろうか。(記事:千葉明・記事一覧を見る)