39億年前に起きた、激しい小惑星爆撃の謎 月の石から解明 独ミュンスター大学の研究

2021年11月10日 07:55

 独ミュンスター大学らの研究グループは、アポロが月から持ち帰った石のサンプルを分析し、今からおよそ39億年前に月面に多数降り注いだ、小惑星の嵐に関する研究結果を公表した。研究論文は、米ネット科学ジャーナル紙SCIENCE ADVANCESに掲載されている。

【こちらも】生命誕生の時期にも影響か? 後期重爆撃期は従来予測よりも前に 米大学の研究

 この時代は、専門家の間では後期重爆撃期と呼ばれる。まだ太陽系にたくさんの小惑星が漂っており、それが月や地球に降り注いでいた時代だと推定されている。だがなぜ、この時代にこのような小惑星による度重なる爆撃が起こったのかについては、謎のままであった。

 なお前期重爆撃期は、原始太陽系に存在していた星間物質の集積によって、微惑星がたくさん形成された時期をさす。この時期に誕生した原始惑星が、後期重爆撃期に月や地球にたくさん降り注いだというのが現在の定説である。

 ミュンスター大学の研究によれば、アポロが持ち帰った月の石の形成年代は39億年前にあたり、後期重爆撃期のさなかであったという。またこの時代に形成された月面クレーターの数は、他の時代に形成された数よりも際立って多い。

 この時代に月を襲った小惑星の起源については、複数の説がある。1つは、原始太陽系において、月や地球を取り巻く宇宙空間にまだ残存していた星間物質であるとする説。もう1つは、木星や土星などの質量が大きな巨大惑星の挙動が、小惑星や太陽系外縁部にあった彗星の軌道に影響を与え、それらが月や地球付近の宇宙空間に飛来してきたとする説だ。

 ミュンスター大学の科学者らは、月の石の金属成分分析結果から、この石はもともと月や地球を形成した物質と成分が似通っていると主張している。

 これまでに研究された月の石は、月の北中央の地球に面する側にある、雨の海からの物質で構成されている。そのため後期重爆撃期に月や地球に降り注いだ物質は、月と地球の間の宇宙空間を浮遊していた可能性が高いという。さらに彗星が月や地球に飛来する現象は、太陽系誕生後の約1億年間で終わっていたとの見解も示されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連記事

最新記事