新規上場のオーダースーツ企業:タンゴヤに勝算はあるのか!?
2021年11月4日 15:21
青山商事・AOKホールディングスのスーツ量販店2社は、詳細は省くが諸々の対応策の展開にもかかわらず新型コロナウイルス禍に翻弄された(ている)。
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そんな最中の今年8月、タンゴヤがJQ市場に上場した。メンズ・レディース向けオーダースーツを主軸とする老舗である。コロナウイルス問題の出現と数カ月間重なった2020年7月期は、増収減益。が、四季報・秋号の表現を借用すれば【回復続く】と、収益は立ち直り基調。21年7月期は7.7%減収も「59.6%営業増益、5円増配19円配」。そして今期は「10%増収(83億2600万円)、33%営業増益(4億1100万円)」計画。
スーツを身に着ける機会が少なくなった。が、現役時代には「1-2着はオーダースーツを」という思いがあった。タンゴヤのオーダースーツの値頃が気になった。ホープページの「1着5万8000円~」からに目がとまった。「手が出ておかしくない」と思った。また「2着同時(友人と合わせてでもOK)購入なら3万9000円~」と記されていた点にも惹かれた。あつらいスーツとしては手ごろ感を覚えた。
前期決算を改めて調べてみた。前記の通り売上高は緊急事態宣言発出に伴う「一部店舗休業や時短営業」で7.7%の減収。対し営業利益59.6%増。その要因を突き止めたいと思ったからである。2店舗の新規出店&1店舗の増床負担(期末の総店舗数27)があった。Web広告増を中心とした広告宣伝費も増加。それにも拘わらず売上高総利益率(粗利益率)は5.4Pと改善していた。
改めるもないだろうが通常、粗利益率は景気に左右される。コロナ禍を勘案すると「(売上高-売上原価)÷売上高」という算定式である以上、売上原価の低下に要因は求められる。小売業場合、売上原価の低減は、「戦略効果」「販売商品の高品質」に突き詰められる。
商品の質がことさら高まったと言った事案には出会えなかった。となると、戦略効果の発現の寄与ということになる。こんな事実があった。2年近く前から展開を開始している「オンラインオーダー」。2回目以降の購入層を照準にした施策だ。タンゴヤの窓口は、その購入層向けメリットをこう強調した。
「店舗での前回のオーダーを基に、スタイリストのサポートで注文が容易。原則、仕上がり商品は無料で配送される。一定期間までの返品可能。近くに当社の店舗がなくても、2回目のオーダーが容易」。
「売上原価低減」策であるオンラインオーダーについて、売上比率は明らかにしなかった。が、「推進に積極的に取り組んだ」とした。こうした新規戦略が、効果を表し始めた結果と捉えられる。
一般的には(在宅勤務の影響もあり)、ビジネスマンもフリースタイルの時代が進んでいる。既存のスーツ量販店の「曲がり角」論の根底も、そこにある。だがそうした中で登場した創業90年を超えるオーダースーツ店の上場、興味深い。(記事:千葉明・記事一覧を見る)