介護老舗:セントケアHDの収益伸長に見る戦略的足跡
2021年10月25日 16:34
介護士不足⇔待遇問題に加え新型コロナウイルス禍で総じて軟調な経営を知られている介護業界にあり、セントケア・ホールディング(東証1部、以下セントケアHD)の順調さが目を引く。前3月期の「6.4%増収、91.1%営業増益、1円増配16円配」に続き今期も、「6.7%の増収(490億円)、10.5%の営業増益(31億円)、1円増配16円配」計画で出港した。そして開示済みの第1四半期を「前年同期比5.8%増収、23.3%営業増益」で通過。
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セントケアHDのこれまでを振り返ると、「先見性」「機を見るに敏」を確認できる。創業は「介護保険」制度設立(2020年4月)前の、1983年3月。時代の流れを読んだ村上美晴氏(現代表取締役会長)により、日本福祉サービス:訪問入浴業として産声を上げた。
そし今日に至る大きなターニングポイントの1つとなったのが、2007年の旧コムスンからの14県の小規模多機能型居宅介護事業の譲受。詳細は省くが、コムスンの介護報酬不正請求の表面化が引き金だった。
セントケアHDは「小規模多機能型居宅介護」「看護小規模多機能型居宅介護」を軸に事業展開を図っている。前者は通所介護(デイサービス)を中心とした、訪問介護・ショートステイという枠組みで対象者の機能回復と取り組む。後者は「医療依存度の高い人」「退院直後で不安定な人」を対象に主治医と連携して、「訪問看護」「訪問介護」そして「デイサービス」「ショートステイ」を活かし対応する展開。「看取り支援」も範疇としている。前期決算をセントケアHDでは、こう総括している。
「新型コロナウイルス感染症の拡大が、訪問系サービスが見直される契機となった。訪問入浴は顧客数増加⇔稼働向上による売り上げ増、外注派遣費の見直しなどで経費抑制への取り組みで増益となった。訪問看護も前期新規開設の営業所16カ所の順調な育成で売り上げ増を、採用による稼働の適正化や人材紹介料等の経費削減で利益向上となった。
一方施設系事業は、新型コロナウイルス拡大で利用者の手控えや一部営業所の休止等でデイサービスが減収減益となった。だが看護小規模多機能型居宅介護は新規8カ所の開設効果(計35営業拠点)や、前期に開設した10カ所の順調な成長で売り上げ増。小規模多機能型居宅介護も順調に推移。
結果、介護サービス全体で6.3%増収(448億4500万円)/67.1%営業増益(21億8900万円)となった」
また今後についても、収益伸長の背景をこう発信している。
「成長戦略として、訪問看護規模多機能型居宅介護・小規模多機能型居宅介護を位置付けている。2022年3月期には全体で31カ所の開設を予定している。早期の黒字化を図る。ICTの活用等を通しサービスの質の向上、業務効率のさらなる改善を進めコスト管理を徹底していく」。
前期末で全国に550拠点を配し14類のサービスを展開する、老舗介護業者の収益向上の背景を見せつけられた。(記事:千葉明・記事一覧を見る)