欧州宇宙機関、惑星防衛調整室を新たに発足
2021年10月13日 07:57
欧州宇宙機関(ESA)は11日、惑星防衛調整室を新たに発足させたことを発表した。ESAは2019年から、地球に接近したり、衝突したりする懸念がある小惑星を積極的に探索し、警告を世界に発信する本格的な取り組み「Space Safetyプログラム」を進めてきた。惑星防衛調整室の創設は、それをさらに積極的に推進するものとなる。
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従来のSpace Safetyプログラムの意義は、世界各地にある望遠鏡施設を地球に衝突する懸念がある小惑星探索に振り向け、人類の生活を脅かすリスク情報の把握を確実にしていくことにあった。
だが、世界各地の望遠鏡施設が、何の調整もなくばらばらに小惑星探索を進めても、観測領域が重複していたり、最もリスクの多い領域に資源を集中的に投入できなかったりと、効率の良い探索活動を推進していくことは困難であった。そこで世界各地の観測施設からの情報を集め、最適な観測体制をとっていくための調整機関の必要性が叫ばれる中、この度のESAにおける惑星防衛調整室の創設に至ったわけだ。
ESAのNEOCC(near-earth objects coordination centre、「地球近傍天体調整センター」と訳される)は、今後惑星防衛調整室の中心的な役割を担う実働部隊として位置づけられていく。この組織にも独立したホームページがあり、地球近傍に存在しその動きを継続的にリサーチしていくべき天体に関する情報が、ほぼリアルタイムで公開されている。
最新の情報(10月9日に最終更新されている)によれば、このような天体の数が現在2万6,958個も存在している。またすでに軌道要素が特定され、地球に衝突する懸念のない小天体の数は実に、104万0,416個にも及ぶ。
地球近傍天体NEOの監視と警報の発信は、NASAでも積極的に取り組んでいるが、ESAにおいても、それと同じような活動を推進できる体制がこれで整ったわけだ。これまでにNASAやESAが発信した警報によって、人類が滅亡の危機を免れたという事例はないが、今後ともその可能性がゼロというわけでは無い。小惑星衝突は恐竜を滅亡に追いやった実績もあるため、人類にとってその脅威は無視できない。そんな警報におびえさせられる未来が訪れないことを祈るばかりだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る)