AI採用の実験店舗開業、業務スーパー:神戸物産の収益好調をどう読むか!?

2021年9月1日 16:02

 8月27日に複数のメディアが、業務スーパーを展開する『神戸物産(東証1部、東証再編に関する東証からの第1次通知で“プライム市場”移行の対象となった)が大阪でAIを採用した実験店舗を26日開業』と伝えた。AI店舗の詳細は神戸物産とソフトバンク共同の6月21日付けのニュースリリースに譲るが、例えばこんなことが可能な店舗だという。「陳列棚の品切れをAI搭載の店内カメラで自動検知」「ショッピングカートに備え付けのタブレット端末には、購入商品の金額やお薦めレシピが表示される」etc。

【こちらも】巣ごもり消費が「業務スーパー」に追い風、神戸物産が過去最高益 20年10月期

 報道に接した折にまず頭に浮かんだのは、「業務スーパーと普通のスーパーは何が違うのか」だった。調べた。「業務スーパーは個人客の利用も可能。だが普通のスーパーでは例えば肉はスライスして小さく盛られて売られている。が、業務スーパーでは塊で売られており、1g当たり単価で比較すると割安」といった具合に理解すればよいと知った。次に思いついたのは、「だとすれば主な顧客は飲食店ではないのか。コロナ禍で収益状況はどうか」。

 前2020年10月期は「13.8%の増収、24.0%の営業増益」。今期は「0.0%の増収、4.0%の営業増益」と慎重に立ち上がった。だが中間期開示と同時に6月11日、「5%の増収(3580億円)、23.3%の営業増益(294億円)」に上方修正した。神戸物産では「新型コロナウイルス感染症の影響が長期化するなど、先行き不透明な状況下で進行中の中計に掲げた数値目標は据え置く」としながらも、今期の上方修正の要因をこう指折り数えた。

★業務スーパーの出店が期初計画(加盟店制/FC制を展開)を大幅に上回る見通しとなった。今期の出店目標を純増45店舗から60店舗に上方修正する。

★メディアに取り上げられる機会が増え、新規顧客が増加しかつリピーター数も増加。結果、業務スーパー加盟店への出荷が想定を上回って推移している。

★PB商品の出荷比率の向上や物流関連の効率化が奏功し、利益率が向上した。

 「外出自粛や在宅勤務など広範に生活様式が変化しており、まとめ買い効果が」とする類の説明などは一切なし。改めて同社の業務スーパーの在り様を調べた。以下の様な特徴を知った。

■海外約40カ国: 約350の協力工場から約1400アイテムの商品が輸入されている。国内でも23工場で約360に自社アイテムを整備している。「豊富な商品」。

■が、輸入商社/問屋といった流通経路が省かれている。小売店に直接、販売されている。物流コストの低減が図られている。

■自社店舗・加盟店には冷凍庫など独自の什器が整備されている。在庫管理システムが導入されている。

 株価はどう語っているのか。時価は4300円弱。AI実験店舗が開業した8月26日の4360円が年初来高値。踏ん張っている。だがIFIS目標平均株価は3791円。算出している10人のアナリストのうち「強気5人」「中立4人」「弱気1人」と、見方は割れている。

 ちなみに神戸物産の過去10年弱の株価は調整済みで69倍余の上昇となっているが、さて・・・。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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