生命の起源探る研究 地球最初の10億年に何があったのか 米月惑星研究所

2021年8月26日 07:41

 地球が誕生して最初の10億年の間に生命は誕生したと考えられている。この10億年間に地球で何が起こっていたのかを、様々な専門分野の科学者が集まり議論する催しが、2019年9月8日から11日にかけて米国の月惑星研究所主催により開催されている。その中で展開された議論の内容が、Astrobiology誌で公開された。会議からは約2年が経過しているが、この種のまとまった情報が公開されるのは非常に珍しい。そこで今回はその概要について紹介する。

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 この会議の正式名称は「The First Billion Years: Habitability Conference」(最初の10億年:居住性会議、以下便宜的にFBY居住性会議と呼ぶ)。FBY居住性会議では、生命の起源、太陽系における生命の居住性、太陽系外生命の3点にフォーカスした議論が展開されている。以下それらについての議論の概要をごく簡単に紹介する。

 生命の起源については、イエローストーン国立公園を例にとり、熱水システムの存在が生命誕生のきっかけとなった可能性を示唆した。惑星の熱水システムの起源は3つが考えられ、1つは、微惑星の衝突に伴う衝撃で生じた熱エネルギーによるもので、その典型はクレーターにみられるという。火星探査ミッションにおいてクレーターの周辺で生命探査が行われるのもこのためである。

 もう1つは氷の世界における火山の存在、そして最後の1つは火山活動による熱水活動である。またイエローストーン国立公園に存在する多様な熱水システムは太陽系の初期の形態を象徴しているという。

 太陽系における生命の居住性については、イエローストーン国立公園の熱水システムを引き合いに出しつつも、存在する流体が花崗岩の地殻と相互作用するとの理由から、すべての太陽系小天体に生命の居住性を充足する前提条件としてこの条件を直接適用できるわけではないとしている。だがこれまでの火星探査でターゲットとしたグセフクレーターは、生命の居住性について可能性がある候補として取り上げられている。

 太陽系外生命については、太陽系外の恒星の約30%はハビタブルゾーンに惑星を持っているとしている。中でもトラピスト1と呼ばれる、みずがめ座の方向に太陽から約40.5光年離れた恒星系では、赤色矮星の周りを7つの地球サイズの惑星が周回し、最大で3個ないし4個には生命が存在するかもしれないという。

 ただ、紙面の都合でここでは紹介できなかったが、未解決の問題についても多くの記述があり、人類が地球外生命体に出会うまでの道のりはまだまだ遠いようである。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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