火星とその衛星フォボスでの生命探索 JAXAのA火星衛星探査計画
2021年8月17日 16:39
NASA(米航空宇宙局)とESA(欧州宇宙機構)の共同プロジェクトであるMSR(Mars Sample Return)では、火星の古代湖の痕跡ではないかと考えられているジェゼロクレーターにおいて、サンプル採集を行なっている。このミッションではサンプルを探査機が集めるだけで、それを地球に持ち帰るのは、次のミッションにゆだねられ、早くても2031年になる予定だ。したがって火星に生命が存在するかどうかを詳細に見極めるためには、まだ10年の歳月を要することになる。
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だが、より早く火星の生命の痕跡を確認できるかもしれないサンプルリターンプロジェクトがあることを、知っているだろうか。JAXA火星衛星探査計画(Martian Moons eXploration、MMX)は、火星の衛星フォボスから、約10gにも及ぶ大量のサンプルを2029年までに地球へ持ち帰るプロジェクトだ。
MSRは、ジェゼロクレーターでの1点集中型サンプルリターンプロジェクトである。一方MMXは、火星表面でランダムに発生した微惑星衝突時に飛散した物質が、火星の衛星フォボスに飛来したものを持ち帰る計画だ。そのため火星の不特定多数の場所からの物質を持ち帰ることが可能であるところに、大きな違いがある。
はやぶさ2では、打ち上げ前のサンプリリターン目標重量が0.1gであったことを考えれば、MMXのサンプルリターン重量はその100倍にも達するため、多種多様な火星表面サンプルの回収が期待できるわけだ。もしジェゼロクレーターが古代湖の痕跡ではなかった場合、MSRの取り組みは不発に終わるが、MMXではより多くの地点のサンプル回収ができるため、ひょっとしたら生命の痕跡を見つけられるかもしれない。
ただし、JAXAでは生きたままの生命の痕跡の収集はせず、死骸の回収を最初から目論んでいる。大気も磁場もないフォボスに微生物が漂着したとしても、生き延びることは不可能と割り切っているからだ。だが死骸であったとしても生命の痕跡を見いだせれば、それは人類にとって偉大な発見になることに違いはない。
生きた生命体の発見まで欲張るのか、死骸で十分と割り切るのかによって、生命の痕跡を発見できる可能性が大きく異なる。MSRとMMXの各ミッションのどちらが吉と出るのか最終結果が判明するのは、早くて10年後になる。(記事:cedar3・記事一覧を見る)