日本エスコンがESG投資の対象となる理由
2021年8月2日 16:26
ESG投資。生保・損保や銀行の間から、「ESG投資に積極的に取り組む」とする姿勢が伝えられている。周知の通りESGは「環境」「社会」「企業統治」を意味する英語の頭文字から生まれた造語。噛み砕くと、「業績だけではなく、環境や人権などの問題にどれだけ企業が取り組んでいるかを考慮した投資基準」。いま、どんな企業がESG投資の対象になっているのか・・・
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複数の生保の資産運用者から、「日本エスコン(東証1部)」を耳にした。「どんな点を評価しているのか」を問うてみた。「環境省と2015年に設立された環境人材育成コンソーシアムが主宰する『環境 人づくり企業大賞2020』を受賞した。評価の対象となったのは兵庫県川西市で展開する『トナリエ清和台での認知症サポート商店街』と『ZEH―M(ゼッチマンション:再生可能エネルギーの導入で、年間の1次エネルギーをゼロにするマンション)』」と聞いた。
認知症サポート商店街に興味を覚えた。調べた。こんな事実を知った。
★2018年に取り組みを開始。認知症サポーターの要請を受け、認知症の人や高齢層が安心して買い物ができる商店街(ショッピングモール)を創出する試み。
★入居するテナント全てに認知症サポーター養成講座を受けてもらう。ちなみに養成講座の受講は当初、決して順調ではなかった。が、7カ月を要し全テナントの受講に漕ぎ着けたという。なお、日本エスコンの社員の3分の1が講座を受講済みとか。
★こうした段階を経て、地域住民を交えたミーティングを定期的に開催。そこから生まれた様々なアイディアを実現させている。
例えば【無料巡回バス】。川西市エリアの高齢化率は約37%。界隈は坂道が多い。高齢者の買い物は容易ではない。そこで市内の福祉複合施設と交渉。施設のバスが稼働しない午前10時から午後3時までの間、バスを活用。地域6カ所のバス停と「トナリエ清和台」を巡回し、高齢者の「買い物難民化」を解消させた。目下コロナウイルス禍による3密を避けるため運休中だが、収束の段階で再開するという。
例えば【認知症者徘徊対策】。行方不明の認知症者の早期発見で、警察との連携。地域住民の協力を得て、早期発見ネットワークを築いている。並行し年に1回「認知症行方不明者SOS模擬訓練」を行い、「うん」と思った対象者への声がけの仕方などを伝えている。
例えば【認知症カフェ】の展開。情報交換や専門スタッフに相談が行えるカフェ。市内に11カ所あるが、トナリエ清和台でもテナントカフェの定休日を活かし開設している。
改めて、ESG投資の対象となる理由が飲み込めた。
収益の現状は、コロナ禍の影響を受けている。だが過去9年余の株価パフォーマンスは調整済み価格で約32倍。機関投資家のESG(日本エスコン)投資も、このあたりは十二分に織り込み済みとみる。(記事:千葉明・記事一覧を見る)