歯を失った人の体重減少リスク、入れ歯・ブリッジの使用で減少 東京医科歯科大

2021年7月14日 09:13

 東京医科歯科大学は12日、高齢者における歯の本数と体重減少の関係が、入れ歯とブリッジ(連結した被せ物)の使用により変化するかどうか調べたところ、歯の本数が19本以下の人は、入れ歯とブリッジを使用しない場合に体重減少率が上昇することが分かったと発表した。高齢者の体重減少は、健康状態と密接に関わっており、研究グループは、歯の補綴治療によって歯の喪失による健康悪化を防げるとみている。

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 研究は、歯が少ないことによる体重減少のリスク増加に、義歯やブリッジが影響しているかどうかを調べることが目的。2010年と13年に実施された日本老年学的研究調査に参加した65歳以上の高齢者約5万3,000人を対象に、低栄養状態の指標の1つに挙げられる「10%以上の体重減少」について追跡調査を行った。

 歯の本数ごとの体重減少リスクを、義歯・ブリッジの使用の有無ごとに算出したところ、歯数が20本以上の人で体重が減少した人は4.3%だった一方、19本以下の人は6.8%だった。

 さらに、曝露と疫病のメカニズム解明に有用な因果媒介分析の結果、歯数が19本以下の人における体重減少のリスクは、義歯・ブリッジの未使用時の場合、20本以上の人より1.41倍高いことが判明。一方、義歯・ブリッジを使用している場合はリスクが1.26倍となり、体重減少リスクが約4割減少することも明らかになった。

 歯の本数と体重減少のリスクは以前から指摘されている。浜松医科大学は2016年、10万人の高齢者を対象に歯の残存本数と食品の摂取頻度、直近6カ月の体重減少の関係を調べたところ、残存歯が19本以下の場合、男性で痩せのリスクが約1.5倍になる研究成果を発表している。

 日本訪問歯科協会は、残存歯の少ないことが健康リスクを上昇させる理由について、口腔機能の衰えによって、摂食嚥下に問題を抱えやすくなると指摘。この問題が悪化すると、食べにくくなって食事量が減り、体を動かすために必要なエネルギーが減ったり、免疫力が落ちたりして、体に悪影響を及ぼすという。

 歯科業界では、高齢期の体重減少や痩せを予防するために、定期的な歯科検診など適切な口腔ケアの実施を呼びかけていたが、東京医科歯科大の研究によって体重減少に影響を与える変数に補綴治療の有無が加わる形になるとみられる。

 研究を行った東京医科歯科大の相田潤教授は、「たとえ歯を失ったとしても義歯やブリッジといった適切な歯科補綴治療を受けることによって、歯の喪失による健康状態への影響を低減できる可能が示された」と話している。(記事:小村海・記事一覧を見る

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