今後の経済動向を占うアメリカ重要経済指標と株価・為替との関係 後編
2021年7月8日 17:06
毎月第1金曜日(原則)に公開される雇用統計を始めとして、アメリカの経済指標が、FRB(連邦準備理事会、アメリカにおける中央銀行としての機能)の金融政策に大きな影響を与えることは間違いない。「利上げ」は「金融引き締め」となり「ドル高株安」の要因、「利下げ」は「金融緩和」であり「ドル安株高」の要因だ。
【前回は】今後の経済動向を占うアメリカ重要経済指標と株価・為替との関係 前編
ただし、日本国内にとっては、FRBの「利上げ」はドル高「円安」の要因ではあるものの、アメリカ株安に連れて日本株安となれば、「円高」の要因ともなるため、「為替としては表裏一体」の関係でもあることには注意したい。
さて、ここでFRBの金融政策を占う重要経済指標をおさらいしておこう。経済指標については必ず事前に市場予想が公開されており、そこからポジティブかネガティブかによって、株価や為替が変動する。
まず、アメリカ雇用統計は経済指標のなかでも最重要指標であり、毎月第1金曜日(原則)日本時間21:30(冬季は22:30)に公開される。非農業部門雇用者数の人数に注目が集まるが、失業率や平均時給なども重要だ。
続いて重要なのはアメリカGDP(国内総生産)であろう。四半期毎に発表されているが、例えば第1四半期(1~3月)の場合、4月に速報値、5月に改定値、6月に確定値というスパンで公開される。特に4月、7月、10月、1月の月末に公開される速報値のインパクトが強く、アメリカの経済成長率を直接示す重要な指標である。
重要度は一段下がるが、毎月第1営業日に公開されるISM製造業景況指数、毎月第3営業日に公開されるISM非製造業景況指数、雇用統計の2日前に公開されるADP雇用統計、毎月10日ごろに公開される中古住宅販売保留指数は、毎月上旬に公開される重要経済指標だ。
毎月中旬に公開される重要経済指標としては、小売売上高、消費者物価指数(CPI)、そして毎月下旬に公開される中古住宅販売件数、耐久財受注には注目すべきだろう。
さらに、FRBの金融政策を直接的に公開する年8回のFOMC政策金利発表、FOMCの2週間前に公開されるベージュブック、FOMCの3週間後に公開されるFOMC議事録の内容は非常に重要だ。半年に1度行われるFRB議長議会証言もFRBの動向を占う上で重要といえる。
これらの指標は、アメリカの株価だけではなく、日本の株価にも大きな影響を与え、その後の方向性まで変えてしまう可能性がある。たとえ個別銘柄の業績は良くとも、これらの経済指標に巻き込まれて下落(または上昇)することがあるが、全体の方向感としての下落(上昇)なのか、個別銘柄としての下落(上昇)なのかについては、しっかりと見極めていただきたい。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)