温室効果ガス削減VS電源論・小型原子炉論
2021年6月18日 08:50
4月24日の共同通信が『再生エネと原子力で50% 経産省、30年度電源構成』の見出しで、「経産省が2030年度の電源構成目標を、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーと原子力の合計を50%超とすることが分かった。再生エネ比率の目標を現行目標の20%台から30%以上に増やし、原子力は20%程度の目標を据え置く見通し。再生エネをどの程度上積みし、CO2を出す火力発電の割合を減らせるかが焦点。経産省は30年度の電源構成見通しを、今夏に正式決定する方針」と伝えた。
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現政権が掲げている「30年度の温室効果ガス排出量を46%減(13年度比)」達成の道筋を示そうというわけだ。
報道に接し、3つの問題点を調査・整理しておきたいと考えた。
第1は、【日本の電源構成】。NPO法人:環境エネルギー政策研究所では、19年末の日本の総発電量は約6300万kW。中国・米国に次ぎ世界第3位。発電源はエネルギー庁の電力調査統計でみると、以下のような割合。「石炭・その他火力:37.4%」「LNG:35.1%」「水力:7.7%」「太陽光:7.6%」「原子力:6.0%」「バイオマス:2.8%」「石油:2.3%」「風力:0.8%」「地熱:0.2%」。
第2は【世界の電源構成】。自然エネルギー財団の集計では、19年の総発電量はOECD加盟国を中心とした41カ国の総計が世界の約80%を占める。その構成は「石炭:38.1%」「バイオマス:30.4%」「ガス:18.0%」「原子力:12.0%」「石油:1.0%」「自然エネルギー:0.5%」。自然エネ0.5%の内訳は「水力:15.8%」「風力:8.6%」「太陽光:3.2%」「バイオマス:2.5%」「地熱:0.3%」。
そして20年第1四半期では前年同期比で火力:-8%、原子力:-2%。対して自然エネルギーは+6%。脱原発/再生エネ注力の世界的姿勢が読み取れる。
そうした中、第3は【小型原子炉開発の動き】。既存の原発では主流の軽水炉の大型化で1基当たり出力100万kWが主。対し数万から数十万kWと出力は小さいが原子炉を冷却しやすいのが特徴とされる。
「安全性や経済性で既存の原発に対し優れ、再生エネだけでは温室効果ガス削減に限界がある。脱炭素化の切り札」(4月16日、SanKeiBiz)といったメディア配信もある。(安全性に関する)科学的根拠は示されていないが、現にこんな動きがある。
日立と米GEの合弁会社(茨城県日立市)で30年の実用化を目指し、小型原子炉を開発中。東芝、重工も開発中。米国では彼のビル・ゲイツ氏が会長を務めるベンチャー集団が開発中で、20年8月に設計承認を得た案件もある。他にもロールス・ロイス(英)/ニュースケール・パワー(米)/斗山重工業(韓国)なども取り込んでいる。
是非とも、日立・東芝・重工には「脱原発」という世論の中で「何故」を説明して欲しい。「安全」「経済的」という単なる言葉だけでは、日本人は決して看過するまい。(記事:千葉明・記事一覧を見る)