ウェルスナビの「ロボアドバイザー投資」は、資産形成に大きな一石を投じるか⁉
2021年5月31日 17:32
昨年12月、東証M市場に「成り行きを見守らざるをえない」企業が上場した。ロボアドバイザー投資を展開する、ウェルスナビ。ポートフォリオ理論をはじめ、世界水準の金融アルゴリズム(コンピューターが状況等に応じ金融商品の売買を行う)で武装した人工知能(AI)により、投資家に「ポートフォリオ」を提案。「リスク許容度」「達成目標金額」で合意すれば「投資一任型」の運用が行われる。一任運用には市場の状況に応じた、リバランス(ポートフォリオ組み換え)も含まれる。
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時代劇やニュース以外にTVを観る機会が少ない私だが、ここにきてウェルスナビの広告を目にしない日はない。創業者CEOの柴山和久氏自らが登場し語るCMは耳にする限り、「投資に関する知見や経験がなくてもできる資産運用(づくり)が可能」という内容。上場後初の決算となった2020年12月期預かり資産は、19年12月期比61.8%増の3,291億円。
前12月期は「62.1%営業収益増z(25億1600万円)、営業損失9億7800万円」。今期計画は「新型コロナウイルス禍の影響を正確に把握しえない」とし見送りでスタート。が、第1四半期(営業収益8億9700万円、営業損失1億2300万円)開示時点で「71.5%の営業収益増(43億1600万円)、広告宣伝費+営業利益10億7600万円」と、収入は増えるが「広告宣伝(費:明記なし)に注力し認知度を高める」という稀有な通期計画を示した。
10万円からの運用預託が可能。営業収益は預託資金に対し最低でも1%水準。現状では「成り行きを見守らざるをえない」としか記しようがない。
だが柴山氏がどんな経緯で15年にウェルスナビを起こしたかには、興味深さを覚える。東大法学部、ハーバード・ロースクール、INSEAD(世界トップクラスのMBAスクール)を経て日米財務省9年勤務。マッキンゼーに身を転じ、ウォール街に拠点を置く機関投資家の10兆円規模の運用・リスク管理を1年半サポートし、ウェルスナビを立ち上げた。「何故」をこう語っている。
「米国人の妻の両親は若い時から20年以上、専門のアドバイザーに資産運用を任せ、“長期・積立・分散”の資産運用を続けた結果、富裕層の仲間入りをしていた。一方、私の両親の金融資産は殆どが預金。双方の退職後の資産は10倍もの差があった。衝撃を受けた私は、誰もが安心して利用できるお任せで高品質な資産運用サービスを日本でも立ち上げようと決意した」
ロボアドバイザー投資を「例えばネット証券で株式を100万円分購入した場合の手数料は500円強に比べ、倍近い手数料を課金される」「短期投資には向かない。あくまで余資でなくてはならない」「インデックス型海外ETFが投資対象の主。下落時の利益に疑問を禁じ得ない」等々のデメリットを指摘する声もある。が、資産形成の在り方を一変させる可能性も孕んでいる。とくと推移を見守りたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る)