火星の火山、現在も活動か 米国惑星科学研究所
2021年5月11日 08:15
米国惑星科学研究所は、火星においてつい最近まで火山活動があった可能性を示唆する情報を公開した。これによれば火星での最近の火山活動の証拠は、噴火が過去5万年以内に起こった可能性があることを示しているという。
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これまでの定説は火星における火山活動は、およそ30ないし40億年前に始まり、300万年ほど前までは継続していたとするものであり、現在も火山活動が継続していることを示すような具体的な証拠は全く見出されていなかった。
2018年11月27日に火星に着陸したNASAの無人探査機インサイトは、2021年3月にケルベルス地溝帯と呼ばれる地域で2つの大きな地震を検出している。また最新の観測によれば、この場所における火山堆積物は4万6千年前に形成された可能性があり、この発見は従来の常識を覆す極めて画期的なものであるという。
ケルベルス地溝帯が火星における活断層帯であることは、2019年12月に同じく無人探査機インサイトが地震波を検出したことにより、すでに明らかにされていた。その報告によれば、マグニチュード3から4のレベルの地震波を検出していたという。
インサイトの着陸地点からケルベルス地溝帯は1600km離れているにもかかわらず、明瞭な地震波を観測できるほどの大きな地震が起きている事実は、当時も画期的なニュースであった。
ケルベルス地溝帯における地表の割れ目の両側に見える暗い部分は、幅が13kmに及び、これまでに火星で発見された最新の火山活動を示す証拠だという。従来火星で見つかった火山活動の痕跡はすべて溶岩がゆっくりと地表に流れ出る形態であったが、ケルベルス地溝帯における火山活動の痕跡は爆発的なものであり、非常に珍しいケースである。
ケルベルス地溝帯で過去5万年以内に爆発的な噴火があった事実は、近い将来再び活動が活発化して、噴火に至る可能性を示唆するものであると、研究者たちは期待している。また2019年12月の報に続き、つい最近においても地震波が観測された事実は、火星はまだ死んだ惑星ではなく、立派に活動をしており、近い将来、活断層の地熱をエネルギー源とした火星定住の可能性にも期待を持たせてくれるものである。
ひょとしたら次の火星有人ミッションの着陸予定地は、ケルベルス地溝帯が選ばれるかもしれないと考えるのは早計だろうか。(記事:cedar3・記事一覧を見る)