ケプラー宇宙望遠鏡がもたらした赤色巨星の構造情報 独研究所が解析

2021年4月27日 18:57

 NASAのケプラー宇宙望遠鏡は、直径140cmの反射鏡を備え、太陽系外惑星を探索する目的で2009年に打ち上げられたが、すでに運用は、燃料枯渇により2018年10月30日に終了している。明るさが変化する恒星(変光星)を探すことで、その星の光をわずかながら遮る惑星を見つけられる可能性があるが、この理屈で観測を継続し、これまでに数多くの太陽系外惑星の発見に貢献してきた。

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 ケプラー宇宙望遠鏡は変光星をできるだけ多く捉え、その中から惑星を探し出していくことが最大の任務であったわけだが、その任務の副産物として、恒星どうしの食によって明るさが変化する食変光星も捉えており、そのデータが赤色巨星の構造や挙動を知る手掛かりにもなったのだ。

 ドイツのマックスプランク太陽系研究所は、フランスの天文学術雑誌「Astronomy and Astrophysics」において、食変光星で赤色巨星を伴った連星系の観測データを解析した研究論文を公開し、赤色巨星の構造に関する情報を明らかにした。これは恒星の核融合の周期に着目し、その構造の謎に迫ったものである。

 実は太陽も5分周期で核融合反応の振動が起きているが、これは太陽の上層表面で起きている対流によるものとされている。恒星における核融合の振動周期は、その星の構造によって決まるのだが、今回の論文では恒星の中でも赤色巨星にフォーカスし、ケプラー宇宙望遠鏡が発見した16の赤色巨星を伴う食変光星の詳細な解析結果が示されている。

 この16組の連星系の解析により、16個の赤色巨星の振動情報からこれらの質量と半径を導出したところ、質量で約15%、半径で約5%大き目な数字となった。だが先に示した太陽でも起きている上層表面の対流の効果を約14%増加させる補正をすることで、質量も半径も適切な評価が可能になる見通しが得られたという。だが、その妥当性の検証にはさらに多くのサンプル星の評価が必要であるとしている。

 またケプラー宇宙望遠鏡では長期間にわたって安定した測光が可能なため、半年間における赤色巨星の潮汐効果による自転周期の変化を捉えることに成功した。その結果、連星系が相互の星に及ぼす潮汐効果によって、赤色巨星の核融合反応の振動が抑制されることが明らかになった。

 ケプラー宇宙望遠鏡は、恒星の構造の詳細な解析や核融合メカニズムの解明をしていく星振学の発展に大いに貢献した。普段夜空を彩る様々な恒星たちにはそれぞれに独自の進化のドラマがある。星振学はこれからもそんなドラマの数々を私たちに明かし続けてくれるだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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