新しい看護・介護の道筋作りに挑む、女性経営者の本気度

2021年4月6日 18:56

 介護・福祉関連の週刊紙で、N.K.Cナーシングコアコーポレーション(鳥取県米子市、N.K.Cナーシング)という企業を知った。『遠距離介護支援 保険外訪問看護サービス』の見出しに惹かれ、読んだ。取材をしたいと思い、アプローチ。神戸貴子社長と遣り取りをした。

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 日本の年間の介護離職者は、約10万人。経済的な損失は6500億円に上る、という試算もある。核家族化が進む中で、「介護を巡り家族間の軋轢が生じる」といった指摘もある。神戸氏は「介護士が安心して介護に携われるように、同時に介護者の立場も支援したい」とする。N.K.Cナーシングが展開する事業の柱は、以下の2本。

 1つは、「通院や買い物の付き添い」「健康チェックや服薬状況の確認」「電話・訪問」等。利用料金は通院・外出付き添いで、1時間当たり6000円から1万円。通院に際して同行する医療知識を備えた看護師・介護士は「守秘義務」を前提に、医師や薬剤師の伝達事項を依頼者に伝える。定期的な利用者:会員登録者には「看取り支援(親族が臨終に駆けつけるために各地から移動する。移動中の親族に入院している親御等を逐一報告する)」も行う。

 1つは、遠距離介護支援事業を進めている。神戸氏(看護師&ケアマネージャーでもある)の実体験(遠距離介護と育児の両立)に基づいて立ち上げた事業。ちなみにイベントやオンラインコミュニティなどで遠距離介護をするケアラー(介護者)を支援する、「遠距離介護支援協会」を運営している。

 「ご自身も体験されたように、遠距離介護と一口に言っても決して容易ではないと思うが・・・」という問いかけに神戸氏は、「難しいイメージを持たれるだろうが、介護保険サービスや保険外サービス、それに介護士不足で注目されているICT介護を組み合わせることで、負担はかなり軽減する」とした上で、ICT介護に関しこう続けた。

 「ご年配の方の中には他人が自宅に入ることを拒む人も少なくない。そうした方にはお掃除ロボットを使ってもらう。見守りなどもそうした機能を持つロボットに委ねる。内服指導でも、時間になったら教えてくれるロボットも登場している。こうした“時代”を活用することで、ずいぶん違ってくる」。

 現状では事業エリアは主に、西日本。だが「要望が背中を押してくれれば東日本日にも広げる。現に歩み始めている」(神戸氏)。介護士の離職の背景として「処遇面の問題」は否定できない。その意味でも保険外訪問介護・看護サービスは、看護師・介護士に「働き甲斐」をもたらす。

 今後のN.K.Cナーシングの方向を見定める上でも、看護師・介護士体制の整備がポイントになろう。現行勢力は25名。増加施策として神戸氏は、「例えば今後は、遠距離介護支援協会の(活動を通して)メンバーの中で訪問介護をしたいとするスタッフを集いマッチングも図っていく」と具体策にも言及した。

 新しい看護・介護の方向を志向するN.K.Cナーシングの動向を見守りたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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