引き金が引かれた? バブルが崩壊する仕組みと3つの共通点 後編
2021年3月30日 16:55
では、3つ目の条件である「経済過熱感」についてはどうだろうか。実は、これが一番判断し難い。たとえば、暴騰レシオやサイコロジカルラインなどのテクニカル分析で一定の過熱感を知ることも可能だが、知ることができるのはバブル崩壊につながるような市場全体の過熱感ではなく、あくまでも昨今の値動きから導きだされた短期的な過熱感に過ぎない。
【前回は】引き金が引かれた? バブルが崩壊する仕組みと3つの共通点 前編
バブル時には、とにかく株を買えば儲かるという「勘違い」に市場が支配されている状況であるが、最終的には「近所の井戸端会議で、株価を話題にしているのを聞いたら、バブル崩壊直前である」という表現が言いえて妙だろう。
これは、資産運用に興味の無い人たちが株価を話題に出すほど、株価の値動きが頻繁にメディアで取り上げられている状況であると理解すれば良い。このような話が広まっていくことで、「株は儲かる」という間違った認識が刷り込まれて伝播していくため、さらなる株価の上昇局面を迎える可能性も高いが、近いうちにピークが来ると構えたほうが安全だ。
では、2021年3月末時点において「経済過熱感」があるかどうかといえば、明らかに「ノー」ではなかろうか。コロナ禍はワクチンの接種開始で鎮静化すると思われていた節もあるが、結果としては変異株が流行することで、世界中で未だに感染者数が増え続けている。
日本においては首都圏がようやく緊急事態宣言を解除したばかりだが、「経済過熱感」どころか市場は閉塞感に支配されており、コロナ禍の影響を受けた倒産情報や、時短を強いられる飲食店、オリンピック特需が期待できなくなった観光地の悲痛な叫びが、日々聞こえてくるという状況だ。
しかしながらその一方で、アメリカでは先日話題になったアプリ「ロビンフッド」の普及などから個人投資家が増えていたり、世界中の富豪の資産がコロナ禍においても増え続けて過去最高を記録していたりと、一部の人間はバブルを体感している状況があることを見逃してはならない。
もちろん日本も例外ではなく、2020年12月には、個人や企業の金融資産は過去最高になったという。コロナ自粛による節制と給付金などから、資産や預金は間違いなく増えているのだ。
つまり、実際には「経済過熱感」が市場にはあるのだが、コロナ禍というベールがそれを覆い隠しているだけと考えても良いのではなかろうか。さすれば、バブル崩壊時の3条件が揃うことになり、いよいよコロナバブル崩壊の足音が近づいてきたといえるだろう。
そしてこのような状況下で、野村ホールディングスがアメリカで多額の損害を発生させたというニュースが舞い込んできている。3月29日の終値は、前営業日比16.3%安の603円と、上場来最大の下落率だ。原因は、米株式市場で26日に実行された約200億ドル規模の株式ブロック取引であるというが、規模が前代未聞であるという。これが金融不安と広がり、バブル崩壊の引き金となるのだろうか。市場の値動きには十分に注視されたい。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)