FRBと日銀の一蓮托生 まさかのSLRの緩和措置終了と日銀黒田総裁発言 前編
2021年3月25日 07:19
バブル崩壊の元凶となる金融不安は、世界の中央銀行の政策変更と共にあることは以前お伝えしたとおりであるが、コロナバブルが経済過熱感につながり、米長期金利の上昇が止まらなくなる中、アメリカのFRB(アメリカの中央銀行としての組織)は苦しい選択を迫られていたはずだ。
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そのような状況下で、市場参加者から早期のテーパリング(金融緩和の縮小、出口戦略のこと)観測が予想され始めたが、たしかに3月16日、17日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)においても、2021年10~12月期の実質GDP予想の中央値が大幅に上方修正されたのである。まさに経済過熱感の裏付けともいえよう。
このことから、FOMC後にFRBからテーパリングに関するメッセージが出されるのではないかと市場は身構えたが、パウエルFRB議長は当然のことながら「テーパリングについて協議を始める時期ではない」と発言し、金融不安の払拭に努めたのである。アンバランスな発言とも感じられるが、市場に安心感を与える責務を果たしたともいえよう。
しかし、そこには1つだけ気になる点があった。それが、SLR(補完的レバレッジ比率)の基準を緩める緩和措置の終了だ。
SLRとは、金融機関の自己資本規制の1つであり、2008年のリーマンショック後に設けられたものであるが、端的にいえば、大きな金融ショック時でも損失を吸収できるだけの資本を積んでおくよう、大手銀行に求める内容だ。
コロナ禍の真っただ中にあった2020年4月、FRBはこのSLRを1年間の期間限定で緩和した。ショックに備えて設けた規制であるSLRを、ここぞとばかりに緩和したのだ。もちろんこの緩和によって、銀行は積み上げてきた資産に流動性を持たせることができたため、コロナショック当時の米国債市場の混乱にも対応ができるようになり、結果としては市場の安定に大きく寄与したといえよう。
その緩和期限が3月末に迫る中、昨今のパウエル議長の発言からもSLRの緩和措置延長が期待されていたが、3月19日、予定どおりの1年間(2021年3月まで)で緩和措置を打ち切ると発表したのである。当然でもあり、意外でもある行動だ。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)