最も遠方にあるクエーサーの電波をキャッチ イタリア国立天体物理学研究所
2021年3月23日 07:50
ヨーロッパ南天天文台が発刊しているアストロノミー・アンド・アストロフィジックス誌で22日、宇宙で最も遠い世界にあり、強い電波を発するクエーサーVIKJ2318-3113に関する研究論文が公表された。
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クエーサーは、非常に遠い宇宙にあり、銀河の1000倍ほどの明るさを持ち、恒星のような点光源として捉えられるために準星とも呼ばれている。その実態についてはつい最近まで、明らかになっていなかった。クエーサーの本質は宇宙誕生のごく初期に形成された活動銀河核の一種とされているが、強い電波を発するQSS(準恒星状電波源)と、比較的穏やかなQSO(準恒星状天体)の2種類がある。今回研究論文で取り上げられたのは前者(QSS)である。
宇宙は膨張を続けているため、遠くにあるものほど高速で遠ざかっており、遠方から届く電波や光はその影響で波長が伸びてしまっている。これを赤方偏移と呼び、Zなる記号でその量が表現される。Z=1の場合、その天体は地球から光の速さで遠ざかっていることになる。
つまり、Zが1を超える場合、空間が遠ざかる速度が光速を超えるため、私たちは見ることができないはずである。ところが現在発見されているクエーサーのZは、0.16から7.5とされ、光速よりも速い速度で遠ざかっているのに、人間が観測できているものがある。
赤方偏移のからくりは、その光が発せられた時期と密接な関係がある。つまりその光が発せられたタイミングでは光よりわずかに遅い速度でその場所が遠ざかっていたが、現在ではその位置における遠ざかる速度が光速を超えてしまっている。そのためZが1を超えてしまっていても、昔発せられた光のため、地球には何とか届いているのだ。
Zが6を超える遠方クエーサーで、電波を捉えることができているものは5つしかない。今回取り上げられたVIKJ2318-3113は、Z=6.44で宇宙が誕生した時期から10億年以内に発せられた電波が捉えられており、電波源として捉えることに成功したクエーサーの中では最も遠くにある存在である。
研究者らによれば、その形態の詳細は不確定としつつも、地球の方向に向けて相対論的ジェットを噴出している可能性があるという。銀河系とは全く異なる、宇宙が誕生したばかりのころの現象をまさにリアルタイムに捉えているのだから宇宙とは不思議な世界だ。(記事:cedar3・記事一覧を見る)