ホヤは鼻先を押すと成体への変態が促される カルシウム濃度上昇で 慶應大

2021年2月25日 08:20

 慶應義塾大学理工学研究科の研究チームは2月19日、海産動物「ホヤ」の鼻先にある付着器に刺激を与えると、カルシウムイオン濃度が上昇して、オタマジャクシ型の幼生期からパイナップル型の成体への変態が促されるとの研究成果を明らかにした。

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 変態を開始させるホヤの付着器のメカニズムは不明な点が多かったが、研究チームは今回の研究成果によって海洋生物の変態メカニズムの理解が進み、水産養殖や漁業被害の防止といった問題解決に役立つとしている。

 変態は成長の過程で体の形を大きさ、形状ともに変化させる現象で、昆虫やカエルなどさまざまな生物の間で起きる。海に生息する無脊椎動物のホヤも変態という機構を有し、フジツボやイガイといった他の海洋生物と同様、遊泳型の幼生から岩や珊瑚にくっつく固着型の成体へと変化する。変態の速度は、ゆっくりと進行する脊椎動物や昆虫と比べて早く、2日程度で完了すると言われている。

 筑波大や広島大などによる先行研究では、神経伝達物質として知られるγ-アミノ酪酸(GABA)が変態の引き金になっているとされる。GABAは、ホルモンの1種、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)を放出し、オタマジャクシ型の尻尾の消失を促しているという。それでも、付着から変態のメカニズムは不明な点が多く、研究チームは今回、体内分子の働きに着目してメカニズム解明に取り組むことにした。

 実験条件は、幼生の体幹部をシャーレに固定し、人工的に付着器に機械刺激を与えることで、退縮を誘導するもの。幼生体には、蛍光の輝度が変化するカルシウムセンサーを導入し、変態する過程でカルシウムイオンがどのように変化するかを調べた。

 すると、付着器への機械刺激から退縮までの間に、感覚器官の付着器でカルシウムイオンの2段階の濃度上昇が確認された。カルシウムイオンの濃度上昇と付着器の感覚神経との関係を調べる実験では、2段階目のカルシウムイオン濃度上昇に、生体の分化を促すFoxg遺伝子による付着器の感覚神経が必要であると判明。

 これらの研究結果により、研究チームは、「ホヤは体外の物理的な機械刺激のみで変態を誘導可能であること、体外からの変態シグナルの合図はカルシウムイオンを介して退縮を誘導することがわかった」と結論付けた。今後は、顕微鏡を用いたイメージングなどを使い、変態メカニズムの解明を目指すという。(記事:小村海・記事一覧を見る

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