人類も経験した4.1万年前の磁場反転の脅威 南オーストラリア博物館などの研究

2021年2月22日 16:54

 今から4.1~4.2万年前に、地球の歴史上最後の磁場反転が起こっていたことの痕跡が、ニュージーランドの「カウリの木」から見出されたとする研究結果が、南オーストラリア博物館などの研究チームにより「サイエンス」誌で発表された。

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 カウリの木は、樹齢が2500年にも達するが、その成長速度は非常に遅く、高さが50mを超え、幹の周りが16mにも達する巨木も存在する。この特徴が、古代のカウリの木の年輪に、地球で最後に起きていた磁場反転の痕跡をとどめることを可能にしたのだ。

 4.1~4.2万年前に起きていた磁場反転事件は、アダムスイベントとも呼ばれているが、旧約聖書に出てくるアダムが経験したかもしれない磁場反転という意味だろう。アダムスイベントは、地球環境に甚大な影響を及ぼしたが、カウリの木の年輪にはその気候変動の経過が克明に記録されており、それがどんな事件であったのかを、詳細に知るための重要な手掛かりを提供したのだという。

 磁場反転が起きると、地球上の磁場は通常の6%以下のレベルにまで低下する。その結果、太陽からの放射線だけでなく、宇宙線から生命を守る天然の磁気シールドが消失し、夜空ではオーロラが頻繁に見られた可能性が高いという。

 当時の太陽からの放射線や宇宙線が、地球生命のDNAにも多大な影響を与えたことも確かで、そのころ人類が飛躍的に進化を遂げた間接的な証拠も多く見つかっている。また、洞窟絵画もこのころから爆発的に増えており、このような様々な生命に起きた変化の原因も、磁場反転でうまく説明がつくという。

 アダムスイベントの時期には、オーストラリア大陸本土とタスマニア島の両方で同時に、巨大生物メガファウナが絶滅しているが、この時期に地域で砂漠化が進行したとも考えられている。

 このような気候変動を引き起こした原因も磁場反転にあり、地球上での磁場の弱体化によって、太陽からの放射線の影響が強まり、大気層ではイオン化が進行。これがオゾン層にも影響を与え、イオン化された空気は雷雨を誘発したため、雷雨の頻度も劇的に高まったものと見られている。

 この時代に洞窟絵画が増えたのも、地表で放射線の影響が強まったために人類が洞窟に避難する頻度が増えたためではないかとも考えられている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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