ビットコイン500万円の大台突破を後押ししたテスラと、中国政府との駆け引き 後編
2021年2月16日 16:53
ただし、2019年の販売台数が約36万台と、トヨタの販売実績の30分の1程度でしかないテスラは、創業以来赤字続きである。年間2兆円ほどの利益を出すトヨタとは雲泥の差であるのにも関わらず、株価が上昇しているという実態があるのだ。
【前回は】ビットコイン500万円の大台突破を後押ししたテスラと、中国政府との駆け引き 前編
つまり、テスラはもはや自動車メーカーであるという市場の評価ではなく、GAFAM (Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)のような、シリコンバレー(一部シアトル)に拠点を置くIT企業としての並びとして評価されてきたと理解するのが、適切だろう。
そんな新進気鋭のテスラが、ビットコインに大規模投資をするというニュースが出回ったのだから、仮想通貨市場は色めき立つのも当然だ。このニュースの直後、ビットコインは44万円ほど値を上げており、紛れもなく500万円の大台超えを後押しする結果となっている。
さて、ここまでのマネーの動きを整理すると、一定の懸念が生まれてくることにお気づきだろうか。コロナバブルが富裕層の投資余力となってテスラに流れ、潤滑となったテスラの資金がビットコインに流入し、仮想通貨が暴騰する。これだけでも、貧富の差が2分されていることが容易に理解できよう。
そして、仮想通貨に流れた莫大な緩和マネーが、世界中のマネー流通の亜流として存在することで、これまでの世界のマネー流通総量や、その価値に不均衡を起こすことにはならないだろうか。
もちろん、昨今の暴騰を鑑みて早々と流通を禁止したインドのように、世界各国の中央銀行が仮想通貨に目を光らせていることは間違いなく、今後、仮想通貨への規制を強める可能性も十分にあり得る。また、中国のように自国仮想通貨「デジタル人民元」の開発で対抗しようとする国も出てくるであろう(インドも同じ動きである)。
さらに、中国での現地生産に力を入れてきたテスラと中国政府との関係にも注視すべきだ。テスラの中国における現地生産が、中国の自動車メーカーの成長をけん引してきたという背景もあってか、テスラのビットコイン購入公表の直前に、中国の規制当局からテスラは呼び出しを受けている。その内容はテスラの品質についての苦情であるという。
ビットコインへの投資を含めた、中国政府のテスラけん制の動きなのか、それともテスラが中国政府の動きから視点を逸らせるためのビットコイン投資公表だったのだろうか。その結果はいずれ導き出されることになるだろう。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)