ミトコンドリア機能の低下でアルツハイマー病が悪化 東京薬科大らの研究

2021年2月15日 15:24

 東京薬科大学と学習院大学の研究グループは12日、ミトコンドリア機能の低下が、脳内で生成されるタンパク質であるアミロイドβタンパク(Aβ)を蓄積させ、アルツハイマー病を悪化させるとの研究成果を発表した。Aβが神経原繊維や神経細胞死を引き起こし、アルツハイマー病を発症させることは解明されていたが、今回の研究はさらなる因果関係を明らかにした格好だ。ミトコンドリアを標的とする新たな治療戦略の開発が期待される。

【こちらも】血液1滴でアルツハイマー病の診断ができる可能性 名古屋市立大らの研究

 大阪大学によると、アルツハイマー病は、進行性の認知症状が現れる神経変性疾患である。思考や記憶をつかさどる新皮質や海馬といった脳部位で、Aβが沈着する老人斑や神経原繊維変化などの異常構造物が出現する病理学的な特徴がある。

 アルツハイマー病は1987年に発見されて以降、病態解明が急速に進んでいる。2002年には、Aβ凝集蓄積がはじめに起こった後、神経原繊維変化や神経細胞死といった病変を引き起こし、認知症を発症させるアミロイド仮説が海外研究者によって提唱。昨今は分子領域での研究も進み、ミトコンドリアの機能不全が、アルツハイマー病患者に見られるアポトーシス(細胞死)を招くことがわかっている。

 だがミトコンドリアが、アルツハイマー病の病態制御にどのように関わっているかは不明とされていたため、研究チームは今回、アルツハイマー病におけるミトコンドリアが果たす役割の解明に焦点を当て、研究に取り組むことにした。

 人為的にミトコンドリア外膜に局在する酵素「MITOL」を欠損させたアルツハイマー病マウスを作製し、MITOLの低下がもたらす病態の変化について調べた。

 すると、アルツハイマー病の主因とされるAβに着目した解析によって、MITOLの減少は、毒性の高いAβオリゴマーの蓄積をもたらすことが判明。Aβの凝集度を測定した実験も行い、MITOLが欠損したマウスに沈着したAβ繊維は、Aβ同士を急速に凝集させ、Aβオリゴマー形成を誘導する性質を持つことも突き止めた。

 これらを踏まえ、研究チームは、「MITOLによるミトコンドリアの機能維持が、アルツハイマー病の病態進行をもたらすAβ凝集の産生を抑制している」と強調。ミトコンドリアによるAβ凝集制御メカニズムは、Aβ凝集の抑制という点で新たな治療戦略の確立に生かせるという。(記事:小村海・記事一覧を見る

関連記事

最新記事