豊田章男吠えた (2) 「e-gas(メタンガス)」で起動できるマツダ・ロータリーエンジン

2020年12月29日 08:07

 「早急なEV化についてビジネスモデルを壊す」と言った趣旨で、トヨタ自動車の豊田社長が警告した。「大手メディアのミスリード」と表現し、ZEV(Zero Emission Vehicle)に対処する動きとして、単純に「EVにすれば良い」とする認識に警鐘を鳴らしている。

【前回は】豊田章男吠えた (1) EVはビジネスモデル(雇用)を壊す「大手メディアはミスリードするな」

■EVは発電とセットで考える

 EVにすれば単純にCO2排出が減る訳ではなく、EVを製造するために効率の悪い火力発電を多く利用している国などでは、むしろCO2排出は増えてしまう。フランスでは原子力発電が主力であり、その場合EV化すればCO2排出は削減できると見える。しかし、中国は石炭火力発電が多く、現状でEV化すれば、むしろCO2排出量を増やしてしまうのだ。そのため原子力発電を急速に建設しているが、原子力発電もまた慎重に考える必要がある。

 ドイツは原子力発電を全廃しようと自然エネルギー発電を推進してきたが、電力料金の高騰に阻まれている。太陽光・風力などの自然エネルギー発電は安定して発電が出来ない。また、バッテリーに充電して保存するのは熱効率が悪すぎて出来ないことから、現実的には火力発電などと併用しなければならない。

 だが発電できる時に余剰の電力で「グリーン水素」として貯蔵しておくと1カ月ほど貯蔵できるようで、自然エネルギー発電の弱点を補完できる。「e-gas(メタンガス)」にしてエンジンで発電できれば、自由度はさらに広がり需給バランスが取れる。

 シンセシスト『電気自動車を火力発電で動かすより、ハイブリッド車の方がCO2排出は少ない?』にある、「3.日本における電気自動車とハイブリッド車のCO2排出量比較 D.  CO2排出量の計算結果」の表を見ると、発電設備の種類によってEVにすべきなのかが判明してくる。

 原子力発電が主力のフランスでは、EV化によってCO2排出が削減できると考えられる。中国では非効率な火力発電から原子力に変えることを進めているが、これが同期しないとむしろCO2排出を増やしてしまう。

 日本では、ガソリンエンジンではLPG発電よりもCO2排出量がまだ多いい現状だが、マツダのスカイアクティブ-Xのように熱効率を上げていくと、逆にCO2削減につながることとなる。PHV、HV、マイルドHVなどをさらに進めることで逆転の可能性は高い。

 さらに水素に切り替えていくと、99.99%純粋水素を使うFCVだけでなく、グリーン水素(電気分解で作られる)とCO2を化合させ「e-gas(メタンガス)」とすれば、空気中のCO2を使うことになり循環することが出来る。

■「e-gas(メタンガス)」で起動できるマツダ・ロータリーエンジン

 現在、「e-gas(メタンガス)」で起動できるエンジンが日本にはある。マツダ・ロータリーエンジンである。そればかりかロータリーエンジンは、ガソリンと水素を切り替えて同時に使用できるメリットがある。ガソリンから水素への移行期に対応できる世界で唯一のエンジンだ。

 これで、ロータリーエンジンの燃費の悪さが解消できて、現状の問題点もクリアできることになる。レシプロエンジンのほとんどは、調整する程度でe-gasを燃料と出来るようだ。そうすると、これまでのエンジン技術やミッション技術などが全て活かせることとなる。「脱原発」「脱炭素」を両立し、国の中東石油に依存したエネルギー政策を一挙に解決できることになる。

 さらには、ガソリンスタンドにとっても良いことがある。純水素(純度99.99%)ステーションは1カ所5億円ほどの設備投資が必要とされるようだが、e-gasであれば、調整程度でこれまでのガソリンスタンドが使えると言われている。インフラの保持にもなり、自動車産業全体の維持につながる。それは、雇用の保護にもなる。

 こうした背景を踏まえて、トヨタ自動車豊田章男社長は警告を発したのであろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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