豊田章男吠えた (1) EVはビジネスモデル(雇用)を壊す「大手メディアはミスリードするな」

2020年12月28日 09:05

■豊田章男「大手メディアはミスリードをしないで」

 「EV化を進めればCO2削減に結び付き、地球温暖化阻止が出来る」。こうした報道が多く見られる。多くの自動車メーカーからEVの発売ラッシュが欧州を中心に行われているが、EV化は必ずしも温暖化阻止にならず、「雇用喪失」になってしまう。このことに気付いた欧州各国は50兆円を投資して、「水素社会移行」を考え、「e-gas(メタンガス)」利用に舵を切ろうとしている。

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 現状では各国で発電手段にかなりの隔たりがあり、一概に「ベストな方策」は決められない。だが、EV化を急速に推し進めると、日本では「雇用を失い」、経済競争力を失い、日本国内での主要産業を失いかねない。その理由は、EVではエンジン・ミッションなどの精密部品が必要なくなることで、雇用が大幅に少なくなることが目に見えているからだ。

 そもそも自動車産業はすそ野が広く、部品点数が半減すると言われるEV生産となれば、AI導入の進展も考え合わせると日本経済の瓦解にもつながる社会問題となる。菅首相が掲げる「脱炭素」は、日本の進むべき姿を見通した戦略的政策とはとても思われない。

 一方で、「グリーン水素(電気分解による水素)」を主なるエネルギー源と出来れば、中東石油に依存する必要がなくなり、日本には国際関係で劇的変化がもたらされる。さらに、「シーレーン(石油の海上輸送路)」確保の問題では、南シナ海を領海と主張し始めた中国との関係において大きな自由度が保てることとなる。

 また「グリーン水素」は、企業間の競争に関しても精密機械部品に強い日本の基礎力となり、中国経済との向き合い方に基本的変化をもたらすこととなる。よって、EV普及は必ずしも日本国民多数の利益にならないことから、グリーン水素社会に向けた動きなど慎重に進めなければならない。

 その点において、大手メディアがEVブームに乗った軽薄な判断でミスリードしてしまうと取り返しのつかないこととなる。開発され発売されるEVは、車種単体の性能としてはかなり優れた製品が見受けられるが、自動車ジャーナリストの車種ごとの批評だけでは済まされない現実がある。経済記者を含めて「100年に1度の変革期」を慎重に受け止め、「提灯記事にならない」ことを心すべしと考える。

 また、自動車メーカーもグリーン水素利用に向けた技術開発の現状なども公表し、メディアも取り上げる努力をすべきであろう。特に、マツダはロータリーエンジンの水素利用の可能性をもっと前面に出すべきと感じる。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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