発見されたばかり彗星の姿 皆既日食中に撮影 NASA
2020年12月22日 08:23
アメリカ航空宇宙局(NASA)は19日、12月14日の皆既日食の際に、つい最近発見された彗星の姿をキャッチしたと発表した。この彗星は、皆既日食の前日である12月13日に、タイのアマチュア天文家であるブーンプロッド氏によって発見されたものである。
【こちらも】すばる望遠鏡が「はやぶさ2」の次の目標天体を撮影 国立天文台
アマチュア天文家でもこのような発見が自宅に居ながらにして可能になったのは、サングレイザープロジェクトというNASAが資金提供する市民参加の科学プロジェクトのおかげである。
このプロジェクトでは、ESA / NASA太陽および太陽圏天文台(SOHO)や、NASA太陽地球関係観測所(STEREO)の宇宙船ミッションからの最新画像を一般市民に公開。ダウンロードを可能にして、それらを入手した人々に彗星のような新天体の発見を手伝ってもらおうという企画である。またプロジェクトの名称となっているサングレイザーとは、太陽に非常に接近する彗星のことを意味している。
12月13日に発見された彗星は3,524番目のクロイツ群に属するサングレイザーとして、スミソニアン天体物理観測所 (SAO) が運営している小惑星センターによってC / 2020 X3(SOHO)と名付けられ、登録がされている。
クロイツ群とは数百年前に分裂した1つの非常に巨大な彗星の破片で、天文学者のハインリヒ・クロイツが、太陽に異常に接近する複数の彗星の軌道が類似することからこのことを見出したことにちなんで、命名されたものである。池谷-関彗星などのように、クロイツ群に属する彗星は歴史上、非常に明るくなって肉眼でも多くの市民によって観察されたことが、記録にも残っている。
皆既日食画像が撮影された際、彗星の直径は約15mしかなく、時速約72万km(秒速200km)で、太陽の表面から約434万kmの上空を移動していたという。その後、太陽に最も近い点に到達する数時間前に、強い太陽放射に曝された結果、崩壊して宇宙の塵と化してしまったため、現在はその存在を確認できない。
この彗星C / 2020 X3(SOHO)は発見されてから、崩壊が確認されるまでの時間が非常に短く、はかない命であったが、これを運よく発見できた1人のアマチュア天文家にとっては一生忘れられない思い出に残ることだろう。サングレイザープロジェクトに参加するには特別の資格は不要なため、私たち一般市民にもこのような素晴らしい思い出を残せる道が開かれているのだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る)