白色矮星で発見されたリチウムの謎 ノースカロライナ大学の研究
2020年12月18日 17:24
宇宙に存在する水素、ヘリウム、リチウムの3元素の起源は138億年前のビッグバンにまで遡る。また、太陽のようなごく一般的な恒星である主系列星が、利用可能な核燃料を使い果たして外層を放出し、数十億年以上にわり冷却され続けている燃えカスである白色矮星では、水素とヘリウムしか存在しないと従来は考えれてきた。
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だが、アメリカ科学振興協会の学術雑誌サイエンスで12月17日、異常に高いレベルのリチウムが白色矮星で発見されたというノースカロライナ大学の研究論文が公開された。
この論文によれば、白色矮星は、通常この宇宙に存在する最も軽い元素である水素またはヘリウムのみのスペクトル線を示すはずだが、いくつかの白色矮星ではこれらよりも重い元素の存在を示すスペクトルが検出されているという。水素やヘリウムよりも重い元素のスペクトルが見いだされる白色矮星を230個検出し、分析をしたところ、冷却開始から70億年以上が経過した星は2つだけで、それ以外は冷却開始から40ないし50億年未満の星であった。
白色矮星ガイアDR24353607450860305024では、Li、Na、K、Caが検出されているが、なかでもLiの量はビッグバンに由来する量よりも異常に多い。またこの星では表面温度が3,830±230 Kと推定され、低すぎるために水素やヘリウムのスペクトルが検出できないという。白色矮星で水素やヘリウムよりも重い元素が検出される理由は、数十億年以上の長期間にわたる冷却過程により、近くに存在していた微惑星を吸収していったからではないかと考えられている。
この星の冷却年齢は70億歳以上で、当時の銀河系に存在した化学物質が反映されている可能性がある。この研究の最大の意義は、太陽系にある小惑星を調べても、太陽が誕生したころの銀河系に存在した化学物質のことしかわからないが、冷却年齢が70億歳以上の高齢の白色矮星を調べることで、太陽が誕生するよりもずっと以前の銀河系の状態を知ることができるという点にある。
ここで冷却年齢とは、主系列星が白色矮星化して以降の年齢を意味し、主系列星であった時代の年齢は含まない。たとえば白色矮星化に誕生から100億年を要するとすれば、冷却年齢30億歳の場合は、誕生から130億年が経過した星であることを意味する。つまり、太陽系が誕生するよりもずっと以前にLi、Na、K、Caを含有する小惑星が銀河系には既に存在していたということだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る)