アスベスト問題のピークはこれから、とされる理由
2020年12月10日 17:16
アスベスト(石綿)被害の問題は未だ終わっていない。「2020年から40年頃にピークを迎える」(環境省)とする予測がある。何故か。
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耐熱性・絶縁性・保湿性に優れた材であり「奇跡の鉱物」とまで言われたアスベストが「静かな時限爆弾」と呼ばれるようになった契機は、05年だった。アスベスト原料や使用した資材を製造していたニチアス、クボタで従業員や家族が「塵肺」「肺線維症」「肺癌」「悪性皮脾腫」により多数死亡した。
アスベスト問題の勃発は、世界最大のアスベストメーカーだった米国ジョンズ・マンビル社で起こった。1973年に「製造者責任」が認定されると、訴訟が相次いだ。結局、ジョンズ社は82年に「日本版:民事再生法」を申請し倒産。
日本でもこれを受け「吹付アスベストの使用禁止」が施行され、85年には石綿セメント管の製造が終了した。その後も「太鼓汚染防止法」「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」等の改定で対応策を強化してきた。
そして2004年までには「石綿を1%以上含む製品の原則出荷禁止」となり、05年には「石綿障害予防規則」が施行。06年には「製造・輸入、使用が原則禁止」となった。それなりの策は執られてきた。が、石綿被害問題はむしろ「ここからが正念場」とされる。
問題は、アスベストを含んでいる可能性が高い築古建築物である。築40年を超える建築物は、約280万棟あるとされる。解体の時期が迫った物件だ。2020年5月の「改正大気汚染防止法」で「全ての建物の解体・改修工事に際しては(アスベストの使用有無を)調査し、都道府県に報告すること」が義務付けられた。
建物解体に伴うアスベスト対応技術も進んできている。とりわけいま注目されているのが、VAWM工法。外壁のアスベストを除去する工法である。
鉄道会社関連の建築・改修工事と並行してアスベスト除去と長らく取り組んできたトッププランニングJAPANと、JRL西日本ビルト/パナソニック環境エンジニアリングが共同開発した外壁塗装のアスベスト除去工法。特許を取得している。
従来の工法では表面の除去は可能でも、内部の下地まで完全に除去することは不可能だった。こんな風に説明される。
「超高圧水を噴射することで、外壁内部に施行されている下地モルタルのアスベストまで完全除去が可能。水圧が周囲に飛散しないように作業は、専用アタッチメント(器具)を装着して行われる。使用された洗浄水は工事現場に設けられた水処理プラント内で、アスベストなどの固形物と分離。その後も洗浄水として利用できる」
だが建築物内部のアスベストを有効に除去する技術に関しては、現段階では聞こえてこない。築古建物の解体時期は、遠くはない・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る)