雇用が問題か? (2) 日本の2050年ZEV目標は、政治ショーか?

2020年12月10日 18:00

 こうした各国の思惑を秘めながら、排気ガス規制が厳しさを増している。各国が掲げるZEV(ゼロエミッションヴィークル)は最長で2050年ごろをめどにしているようだが、「先のことである」として流行りに乗っていこうとしているだけの政治ショー的意味合いに留まる宣言もあるようだ。

【前回は】雇用が問題か? (1) 日産・トヨタ・ジャガー・ポルシェ・ベンツ・BMW・VWのBEV発売ラッシュ

Response『温室効果ガス「2050年実質ゼロ」菅首相初の所信表明で宣言[新聞ウォッチ](2020年10月27日)』によると、菅首相の宣言は❝「我が国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロ。すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言する」❞となっている。

 日本の場合も今のところ具体性に欠け、宣言だけの意味合いが強い状態だ。さらに、原発事業の継続を狙う勢力も強大で、原発再稼働も視野に入れていると見るのが正解であろう。

 米・カリフォルニア州が主導のZEV、欧州のCAFE(企業別平均燃費)、中国版CAFEなど、世界の排ガス規制は進んでいく。しかし、世界の実際のCO2排出に占める割合では40%程度が発電であると言われる中で、単にEV化を進めても意味がない状態だ。フランス、アメリカ、中国などでは原子力発電を主力にしていく計画が目立つ。

 ドイツで自然エネルギーに絞って発電事業を変革しようとしたところ、「電気料金」が跳ね上がり、現実的でない部分が露呈しているのが響いたのであろうか?自然エネルギー発電は「平準化」が難しく、蓄電するにもバッテリーのエネルギー密度が低く実用性が低い。この問題の解決が出来ないと、原発回帰が起きる情勢だ。

 しかし、欧州だけでなく日本でも社会全体を動かす目的の「水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)」が発足したようで、トヨタ、岩谷、三井住友フィナンシャルグループが共同代表を務めるようだ。「水素社会構築を目指す」と明言しての動きで、日本社会としては中東依存の石油エネルギーに替わる水素エネルギー社会を目指す方向性は歓迎すべきことだ。民間団体の動きとは言え、先日の「日本政府の水素エネルギー利用推進」の明確なバックアップ表明があっての団体と見るべきであろう。

 そして、最大の問題が表面化してきたようだ。EVに熱心な欧州各国だが、ここにきて「雇用不安」が政治課題として取り沙汰されている。それは、バッテリー事業では中国、韓国、日本に独占され、EV化で部品点数が半減すると言われる事態では、自国の雇用を維持することが難しくなるからである。そこで、ZEV(カーボンニュートラル)を実現するグリーン水素燃料「e-gas(メタンガス)」の有効性が注目され始めている。

 つまり、「グリーン水素(電気分解で得られて水素)」と「大気中に拡散されているCO2」とを反応させ、「e-gas」と呼ぶメタンガスを生成し、これまでのガソリンエンジンを調整して燃料とすると、CO2の循環が出来ることになるのだ。こうすると、ドイツを始め精密機械加工に優れた欧州各国の技術が生きて、かつエンジンとミッションなどの製造技術が生き残ることとなる。当然に、自国の雇用も守られる。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

関連記事

最新記事