今後の株価の動きを握るジャネット・イエレンと仮想通貨の高騰 後編
2020年11月30日 17:05
そんなイエレン氏が異例の短い任期となり、ジェローム・パウエル現FRB議長に交代したのは、トランプ大統領が自分自身の人事として任命したかったという理由や、パウエル氏がより金融引き締めに慎重であるという理由からで、その手腕に問題があったわけではない。
【前回は】今後の株価の動きを握るジャネット・イエレンと仮想通貨の高騰 前編
金融緩和に対してハト派でありながらも、出口戦略が成功したイエレン氏が財務長官に就任するのであれば、バイデン氏の大規模財政政策の後押しとなるだけではなく、その出口戦略も慎重、かつ市場との対話もできると予想されるため、その意義は大きいといえよう。
そして、イエレン氏が財務長官となった場合に、意外にも恩恵を受けると思われるのが仮想通貨だ。イエレン氏は金融システムに関する知識も豊富で、「技術革新を阻害すべきではない」「ブロックチェーンは金融市場にとって極めて重要」など、仮想通貨市場に一定の理解を示しており、仮想通貨への規制強化には消極的と予想される。
ビットコインはコロナウイルスの影響を受けて、2020年3月には、1ビットコイン500,000円まで暴落したが、その後、世界の株式市場と同様に右肩上がりに値を上げ、8月には1ビットコイン1,000,000円の大台を超えた。9月からは暴騰し、その後たったの2カ月で2,000,000円の大台に乗せている。
その後の11月25日には、トランプ政権が暗号資産を取り締まる可能性があるとの観測から、300,000円ほど暴落、1ビットコイン1,700,000円となったが、政権交代やイエレン氏の指名が控えているとなれば、あくまでも一旦の調整と捉えてよいではなかろうか。
期待が高まるジャネット・イエレン氏の財務長官就任ではあるが、1つだけ懸念点がある。それは、2019年8月5日に寄稿されたウォール・ストリート・ジャーナルの内容だ。この寄稿には、FRBの歴代議長が名を連ねているが、内容としては「FRBは政治的な圧力にさらされないような、中立的な立場を維持すべき」というものであった。
当時、金融引き締めとしての利上げを、慎重ながらも行い続けるパウエル現FRB議長と、金融緩和を望むトランプ大統領との関係は悪化しており、その状況からトランプ大統領を暗に反論した寄稿ではあるのだが、財務長官になれば政治の中枢に入ることになる。
FRBとの関係は良好ではあるものの、政治と経済問題の狭間で、果たしてこれまでのような立ち回りができるのであろうか。財務長官となった際には、その手腕に注目していきたい。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)