74、90、10式戦車の歴史は砲弾と「盾と矛」の関係 (3) 核戦争の恐怖 戦車戦は情報戦

2020年11月23日 16:41

■核戦争の恐怖

 旧ソビエト連邦がワルシャワ機構軍を率いてNATO軍と対峙していたころ、戦車の数ではNATO軍を圧倒していた。それに対抗するためNATO軍は、武装ヘリからの対戦車ミサイル攻撃を準備していた。しかし、当然にワルシャワ条約機構軍も武装ヘリなどの装備も行ったため、戦争になれば圧倒的に戦車の侵攻を許してしまうことになるとNATO軍側は恐れていた。

【前回は】74、90、10式戦車の歴史は砲弾と「盾と矛」の関係 (2) 砲弾が変われば防弾板も変わる

 そのために準備していたのが戦術核ミサイルで、限定的核戦争を模索していた。

 これとは反対に、現状の戦力ではNATO軍の戦車はアメリカ・MI、ドイツ・レオパルトIIなど照準器、暗視装置、法安定化装置などでロシア軍の敵ではないと考えられる。そこで、ロシア側が限定核戦争を想定することとなり、それはすなわちどちらにしても全面核戦争になるものと想定される。

■現代の戦車戦は情報戦

 イラク戦争では、砂漠においてイラク軍の旧式なソ連製戦車と戦闘が行われた。結果として、情報システムと照準器、暗視装置、砲安定化装置などハイテク装備の差が勝敗を決めたことが明白となっている。

 同戦争では、衛星やドローンなどからイラン軍の動きを掴んでいるアメリカ軍が、さらに暗視装置の優位を使って夜間待ち伏せすることが可能で、ほとんど「虐殺」と言ってよい一方的な戦闘となっていたようだ。その様子は衛星中継によりアメリカ・ペンタゴンではリアルタイムで見ていたと言うのだから、「宇宙戦争」をロシアや中国が考えるのも無理はない。

 日本の陸上自衛隊、最新の10式戦車は、やはり世界最高水準の照準装置であり、90式に比較しても360度全方位の行進間射撃で初弾を命中させる能力が向上しているようだ。こうして戦車も砲運搬装置となり、ウエポンシステム(武器体系)の一部となっているのであろう。それは、運用の利便性など考えて移送がしやすく、防弾鋼板の性能など単体の性能で考えるのではなく、情報統制システムの一部として考えられているからだ。C4I「Command Control Communication Computer Intelligence」指揮・統制情報処理システムの搭載だ。

 それでも、田んぼなど湿地が多く、遮蔽物も多い地形の日本国内では、砂漠戦とは違った能力が求められている。日本独自の衛星やドローンなど通信・偵察システムを整備しておかないと、どのような兵器も役に立たないこととなる。いずれにしても全面戦争となった場合、泥沼と化すことは間違いあるまい。限定核戦争までは想定していないと、戦車も作れない時代である。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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