74、90、10式戦車の歴史は砲弾と「盾と矛」の関係 (1) 世界政治情勢と装備の変化
2020年11月22日 15:56
陸上自衛隊の最新鋭戦車「10式戦車」は最高出力1,200馬力。だが、旧世代90式戦車は1,500馬力。なぜ?最高出力が下がるのか。これは新世代になって軽量化が進んだからだ。車重50t->44tになり、1,500馬力->1,200馬力になったと言うわけだ。走行性能はこれで十分であり、情報戦・照準装備は大幅に進歩している。そして、砲弾・防弾板の進歩が大きく影響している。
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■世界政治情勢と装備の変化
軽量化の理由は、90式が北海道に専用配備することを考えていたのに対し、10式は全国配備となり、輸送の利便性を考慮しているためと説明されている。これには、旧ソビエト連邦崩壊が大きく影響している。つまり、旧ソビエト連邦の侵攻を想定して北海道が最前線とされていたかつてと、中国の侵攻を想定して南の東シナ海を最前線とする現在との違いが大きく影響している。
現在、南の海が騒がしいのは、中国の南シナ海占有宣言のためだ。中国は経済発展と共に覇権主義の主張を鮮明にし、通常戦力のみならず核戦力の整備を急いでいる。今では、アメリカに対しグアム島まで下がるよう主張し、西太平洋の覇権を堂々と主張するまでになった。当然に、日本列島は中国にとって太平洋進出の壁になっており、中国の勢力下におくことを宣言しているようなものだ。
その中国にとって、アメリカに対抗するには「核戦力の完成」が必要であり、それには潜水艦発射型SLBMの配置が必須だ。そのため、制海権を握った海域として南シナ海を確保して、SLBM搭載原子力潜水艦を回遊させるつもりなのだ。ロシアにとってのオホーツク海のように。中国は、南シナ海の覇権は戦争してでも握るつもりなのだ。
それに対応するため日本は「水陸機動団」を創設して装備を充実させ、訓練を繰り返している。これには新鋭護衛艦「ひゅうが型」「いずも型」4隻を空母に改装して、F35Bの運用を始めようとしている。オスプレイ搭載「汎用軽機動車」も開発配置し、アメリカ海兵隊のように上陸作戦を行えるように備えている。
このような日本周辺の情勢変化に応じて、装備する戦車の形態も変化し、運搬や運用をしやすくするために10式戦車は機動性を重視している。また情報戦に対処するため、C4I「Command Control Communication Computer Intelligence」という指揮・統制情報処理システムを搭載している。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)