決算数字を分析しても出て来ない、トヨタの強さの源泉は「現場力」? (2)
2020年11月20日 16:53
現在でも「トヨタは造り方で世界をリードしている」ことを理解するには、現場で「カイゼン」作業を経験し、さらに俯瞰して決算数字に繋がる部分を理解しなければならない。それが分かってしまえば、「資材仕入れから製造、製品納入、現金化まで、リードタイムと在庫が極端に削減される」だけだと理解できる。
【前回は】決算数字を分析しても出て来ない、トヨタの強さの源泉は「現場力」? (1)
「造り方」と「投資資金」の関係性について、現場の姿を見て「思い知る」ことが出来ないと、多くの人が『資金効率は造り方で決まる』ことが信じられないようだ。「設計・資材・製造・生産・生産管理・在庫管理・品質管理・人事・経理・営業・宣伝技術など」の【関連性】をよく理解できていないと理解は難しい。
牧野茂雄氏は前述の記事で、以下のように述べている。❝筆者は過去、全世界で部品から車両まで300カ所以上の工場を取材してきたが、これ見よがしの先端マシンを並べた驚くほど綺麗で静かなドイツの工場に対し、日本のサプライヤーは「よくもこの古い設備と床面積でこなしているなぁ」と思う❞
ここがポイントの1つで、「立派な自動機」は『加工(工程)が奥に隠れてしまい、「カイゼン」が逆に阻害されてしまう』ことがあるのだ。筆者も工場現場責任者であった頃、「トランスファーマシン」をセットアップする時、昭和時代の機械ではなく大正時代の機械までも修理して使っていた。半世紀近く前のことで、現在に置き換えると「昭和の機械」と表現するのが適当であろうか。
また「床面積が狭い」ことがポイントだ。中間在庫が少なければ面積は最小限となる。フォード方式のロット生産とトヨタのかんばん方式を比べてみれば、作業面積でおおよそ1/10程度になることも珍しくはない。すると、設備投資資金として、土地・工場面積が極端に小さくなり、削減できることが分かる。
製造時に工程をカイゼンすることは日常的にあるため、とくに工数が多くネックになる工程には高性能マシンを導入する。だが、その工数以下の工程では中間在庫を発生させないことが前提で、製品の移動を自動で行えるようになどして、工程を表面化しておく。
製造技術は日々進歩しており、例えば「チップ(刃先)」の材質が進歩しただけで、ネックになる工程が変化し、工程を組みなおす必要が出ることもある。そのため、工程は繋がっていたほうが良いのだが、カイゼンを促すためには表面に出ていることが必要なのだ。
そのため、最先端の「高性能専用機」ではなく、設備投資資金の必要がない償却しきった古い工作機械を利用することも有効なのだ。また、❝狭い場所で加工できている❞ことが中間在庫を発生させていないことを示し、資金効率が高い証明なのだ。この中間在庫を削減するには、高性能自動機が良いのだが、高性能機は投資資金もかかり、自動機であるが故に工程カイゼンが出来なくなってしまう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)