「カシオの生産リードタイム短縮」から見るトヨタの強さ (2)

2020年11月17日 11:41

■生産リードタイムの短縮

 生産リードタイムが短縮されるということは、完成品を含めて在庫が減っていることになり、保管に必要な「工場敷地代金、工場建屋建設費用」など資産勘定の大きな資産が削減されている。だが損益に上ってきにくい資産であり、決算書からは経理の知識だけでは見つけにくいのだ。

【前回は】「カシオの生産リードタイム短縮」から見るトヨタの強さ (1)

 商売に必要な「総資金量」が削減されているため、経理事務的感覚でなく商売の感覚が必要なのだ。物流店舗では『提案型販売』で、在庫量を極限出来ると、店舗面積が極端に削減されて固定費が大幅に下がり、損益分岐点が大きく下がることになる。

 通信販売で「提案型販売」を行うと、通販で「展示スペース」が必要なくなるうえに、『売る商品しかし入れない』ので物流倉庫が局限される。配送センター面積、設備が極限出来るのだ。これには『「広告技術」の連動』が必要だ。「基本的な広告の視野」を変更することだ。実験では「物流の総資金量は1/4程度」に削減できる。つまり「資金効率は4倍」だ。製造工程を持つ製造業では、1,000倍の資金効率とも推測される。

 また、カシオのように商品が主に時計であるのと、トヨタのように自動車であるのでは、在庫スペースが大きく変わり生産リードタイムの短縮効果は自動車ではかなり大きいとみられる。資金効率向上の幅も大きく変わる。

 これは完成品の在庫スペースをイメージしてみると直感できる。自動車1台と時計では必要なスペースが大きく変わる。金額ベースで考える必要があるが、直感として生産リードタイムを短縮する効果を理解できるだろう。つまり大きな商品を取り扱うと、在庫を削減する効果が大きいのだ。

■提案型販売の姿が

 在庫とは資材を含み「仕掛在庫・完成品在庫」とあり、「提案型販売」では、販売から資材までの在庫を極限するので、効果が大きいのだ。この姿がインダストリー4.0(第4次産業革命)の姿になる。現在、ドイツが先行している消費者から資材まで直結した物流と言えるだろう。インダストリー4.0が実現すると「オーダーメードに、より近い商品を量産価格で、通販で手に入る」ので、ユーザーにとって大きなメリットとなる。

 製造業では現在、努力が続いており、現状では先端にトヨタが位置しているということだ。3万点の構成部品がある自動車製造では、ユーザーに見えないところで続いてきた努力の結晶である「トヨタ生産方式」、現在の『TNGA』の威力が示されたのが、現在の新型コロナウイルス感染拡大によるショックを吸収できているトヨタの姿だ。

 社員の意識コントロールを含めて、巨大な努力が蓄積されていることが分かるはずだ。金融知識のグローバル経営者では解決しえない大きな「塊」なのだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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