紛糾するアメリカ大統領選の行方とトランプ大統領の勝算 前編
2020年11月7日 16:33
アメリカ大統領選挙は、投票日を4日ほど過ぎた11月7日(土)になっても未だに混沌としているものの、僅差でバイデン候補が競り勝っている状況ではある。勝敗が未だに確定していない州はペンシルベニア州(選挙人20人)、ノースカロライナ州(同15人)、ジョージア州(同16名)、ネバダ州(同6名)、アリゾナ州(同11名)、アラスカ州(同3名)の6州だ。
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現時点でバイデン氏は253名の選挙人を獲得しており、残り17名の選挙人を確定することで過半数に達するが、トランプ氏は勝利がほぼ確定しているアラスカ州の選挙人を加えても217名に留まり、残りの5州で合計53名の選挙人を獲得しなければ勝利することはできない。しかしながら、ノースカロライナ州以外の4州ではすべてバイデン氏に逆転されており、現実的にはトランプ氏の逆転は難しいといえよう。
振り返れば、当初劣勢だったウィスコンシン州、ミシガン州にてバイデン氏が逆転したことから大きく戦況が変わってきたといえるものの、トランプ氏のコロナウィルス対応に拒否反応を示す民主党支持者がこぞって郵便投票を選択することは明白であり、その郵便投票は後工程で開票されることもトランプ陣営は理解していただろう。
だからこそトランプ陣営は勝利宣言を早々に行い、支持者を扇動してでも開票作業を止めさせようとした。さらには郵便投票を阻止すべく、既に今年の8月に先手を打ってもいた。前回の記事で記載したトランプ氏の支持者であるルイス・デジョイ郵政長官への交代と補助金カットである。
民主党が大半を占める下院はもちろんのこと、このコロナウィルスが蔓延する最中に郵便サービスの質を低下させることが高齢層の支持率低下につながったため、大幅なコストカットを盛り込んだ郵政改革については選挙後まで延期となったものの、実際には郵便ポストの撤去や職員の残業代カットが粛々と行われていた。
それらの結果として、投票用紙の遅配などが起こりうる状況となったにも関わらず、トランプ陣営は「郵便投票は不正だ」という主張を繰り返し、各州で既に決められているはずの有効投票期日の差異についても訴訟を起こし、投票結果の受け入れを拒絶している状況だ。
なお、トランプ陣営が主張するとおり、「連邦最高裁に訴える」ことになった場合、どのような展開になっていくのだろうか。実は2000年のアメリカ大統領選挙においても、共和党のジョージ・ブッシュ氏と民主党のアル・ゴア氏との間で法廷闘争が展開されたことがある。
ゴア氏が総得票数で上回っていながら、選挙人数でブッシュ氏が過半数より多い選挙人を獲得していたという意味では、前回2016年の大統領選挙であるヒラリー・クリントン氏とトランプ氏の状況に近しい。当時はヒラリー・クリントン氏が総得票数で約300万票リードしていたものの、選挙人数でヒラリー・クリントン氏は232人、トランプ氏は306人となり、トランプ氏が大統領の座を射止めた。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)