コロナ禍でも堅調な歩みを示す介護:ケア21の何故
2020年11月4日 08:26
コロナ禍は介護業界にもアゲインストの風となった。訪問介護、施設介護とも然り。双方が感染リスクを回避するため「介護士の訪問の足」を遠ざけた。クラスターが現に起こり新規入居はままならず、内部維持費がかさむばかりの施設が大方。2日付けの医療介護CBnewsが伝えた様に「介護事業平均収支差率2.4%」。状況が顕著に見て取れる。
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そうした現状は介護事業を展開する事業者の収益に当然、影を落とす。だがそんな中で稀有の業者に出会った。JQ上場のケア21である。
前期に続き今10月期も「訪問介護拠点:11」「介護施設:2」を新規に展開。コロナ禍の影響を勘案し今期の期初計画は「9.8%の増収、20.1%営業減益」で立ち上がったが、期中(9月4日)に売上高据え置きも「営業利益49.8%増」に上方修正。開示済みの第3四半期の営業利益実績は11億1300万円と、修正後の計画値に対し約86%の達成率。本決算での更なる上振れ余地を残している。
株価も反映した動きを見せている。3月にコロナ問題の深刻化で全体相場が大崩れする中1332円まで値を消したが、上方修正を契機に10月初めに3030円まで買い進まれ、時価も欧米のコロナ禍深刻による再度の下落相場でも2000円台入口で値を保っている。
ケア21が希な存在を見せつけているのかの「何故」は、「実際の収益動向」としか説明できない。その背景までは言及しきれない。抽象的だが進出以来の「一貫した姿勢」としか語れない。
創業者会長の依田平氏がケア21を立ち上げたのは、2000年。介護保険制度が施行されたタイミングである。
訪問介護をまず手掛けた。そして在宅介護を基盤に、施設介護にも積極的姿勢を強めていった。
施設介護について同社の最大の特色は資金的に、ミドル層からその下に照準を合わせている点。30年余会社勤めをした場合の厚生年金受給額は、ひと月当たり平均18万円前後。諸々の経費を含め17万円+αで入居が可能。評価に値するといえる。依田氏から「必要条件は満たした上で、決して華美でなくシンプルな施設展開を図っている」と聞いた。
また周知のとおり「介護従業者の不足」が業界の共通課題だが、ケア21では「定期昇給」「退職金制度」「資格取得補助金制度」を敷く対応策を執っている。「施策の対象となる正社員を80%まで引き上げる」と聞いた。そこには依田氏の「どういう人が働いているのか、チームケアがなされているかが肝心。介護にかかわる1人1人が分断されていてはダメ。徹底研修に加え介護士同士の徹底議論を重ね、和を作り上げる努力を常に行っている」という認識がある。
総合福祉という観点から「介護」「障がい者施設」「保育園運営」を展開している点。認知症対応のデイサービスを8カ所で運営。施設介護では「看取り」まで行う。グループホームでも訪問医師・看護師と連携し着手している。そして外国人労働者を受け入れ研修・実践を通して外国人介護士を育成、彼らを戦力に海外への進出も視野に入れている。
今後とも注目していきたい介護事業者である。(記事:千葉明・記事一覧を見る)