木星の衛星イオ、火山が与える大気への影響 アルマが明らかに 米国立電波天文台
2020年10月23日 08:12
木星の衛星イオは、4つあるガリレオ衛星のうちの1つで、火山活動が活発な星であることで知られている。アメリカ国立電波天文台は21日、イオの大気への火山の影響に関する情報を公開した。
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ガリレオ衛星とは、イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイによって1610年1月7日に発見されたもので、当時の低倍率の望遠鏡でも存在が確認できた。もちろん現代においても小さな双眼鏡で木星を眺めれば、誰でもその存在を確認できる身近な存在でもある。
これまでの研究では、イオの大気は二酸化硫黄ガスによって支配されており、最終的には火山活動から供給されていることが示されていたが、その詳細ついては不明だった。この疑問を明らかにするため、研究者たちはアルマ望遠鏡を活用し、木星の影を出入りする月(つまりイオで起きている木星による日食)のスナップショットを作成。
アルマ望遠鏡とは、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計の略称で、チリ・アタカマ砂漠の5000mの高地に、日本・台湾・韓国・アメリカ・カナダ・EUの国際共同プロジェクトとして建設された大型電波干渉計だ。合計66台の高精度パラボラアンテナから構成されている。
イオが木星の影を通り抜け、直射日光が当たらないときは、二酸化硫黄ガスは非常に冷えており、イオの表面に結露する。その間、地球からは火山から供給された二酸化硫黄しか見ることができない。したがって、イオで起きている日食の観察により、イオの火山活動によって大気のどの程度が影響を受けるかを正確に確認できる。
アルマ望遠鏡の卓越した解像度と高感度性能により、二酸化硫黄と一酸化硫黄の噴煙が、イオの火山から上昇する情景が初めてはっきりと映像化された。これらの複数の写真撮影によって、活火山がイオの大気の30~50%を直接生成することを研究者たちは見出した。またこの観測によって、第3の大気成分である塩化カリウムの存在も確認されたという。
イオの火山活動は潮汐加熱によるものだが、これはイオの公転軌道が楕円であるため、木星の重力による潮汐作用が周期的に変化し、その結果イオの内部に熱が発生しているものだ。アルマ望遠鏡によるイオの観測で、この潮汐加熱のメカニズムの詳細を明らかにしていくことにも期待がかかる。(記事:cedar3・記事一覧を見る)