【間違いだらけのクルマ営業 (2)】「できれば買うことを避ける」商品に自らしてしまう
2020年10月13日 07:11
この「一本釣りセールス」の持つ意味を、正確に説明できるビジネスパーソンにこれまで出会ったことはない。そのおかげで市場が荒らされ、徐々に市場全体の縮小を招いてしまった例は多いものだ。
【前回は】【間違いだらけのクルマ営業 (1)】営業効率とは「コミッションセールス」の「一本釣り商法」?
まず、半世紀近く前にブームになった「英語教材販売」、すぐ後の「リゾートクラブ会員権販売」。これらは、詐欺商法すれすれの営業だった。様々な法的規制が設けられるきっかけともなった。
その後、デパート業界では「高級化路線」を進み、詐欺商法ではないが、「上得意客」を囲い込みすることで「買えるなら買ってみろ」と言った姿勢(上から目線)を取ったことが特徴となった。デパート業界は市場の幅を自ら規定してしまい、広がらないようにしてしまった。
スーパーとの対抗上、高額商品に絞らざるを得なかったのだろうが、「待ちの姿勢」のまま「釣りあげよう」とする「一本釣り商法」の姿勢に変わりはなかった。「売れ筋」のみを追いかける姿勢だ。これがユーザーを自ら絞り込んでしまい、市場を縮小させる原因だ。
その次は、「パソコン教室の勧誘」である。英語教材が詐欺的商法であることが広まり英語教室となっていったのだが、それと同時期に、パソコンが普及し始めプログラミングブームが起きていた。その営業も、「コミッションセールスの世界」であった。
現役時代であったので、こうした「営業効率」を重んじるセールスについては筆者も研究してみた。そこで実験して得たデータでは、「一方的な売込みでは顧客満足度が低く、トラブルの率も高く、紹介を貰えることはありえない」ことが判明した。逆に、「信頼関係を重んじて、丁寧な説明をし、判断を顧客に任せる」営業方針の方は成約率が高く、トラブルも少なく、顧客満足度が大幅に高いことがデータに現れた。
この結果から見ても、自動車ディーラーの営業では「営業効率」を求めるより「信頼を求める」方が、結局のところ市場は拡大すると言える。それは、「リピート・紹介」を前提とするからだ。
その意味では、現在推進している「営業効率」は、逆の効果を狙っているようにさえ見える、とんでもない方法論である。言い換えると、目先ラクして「売り上げを挙げる」には良いが、5年も経たないうちにテリトリーの中では評判を落としてしまう方法論だ。
そして、顧客が【実用上必要な場合に限り】購入される市場となってしまう。【できれば買うことを避けたい】商品になってしまうのだ。やはり、刈り取りばかりでは土地が枯れてしまう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)