【間違いだらけのクルマ営業 (1)】営業効率とは「コミッションセールス」の「一本釣り商法」?
2020年10月12日 17:21
新型コロナウイルス感染拡大で、SNSを通じた商談が自動車販売で増えているそうだ。現代の、「営業の効率」を重視して「購買意欲の強い客だけに営業努力を集中する」との考え方に照らせば良いことなのだろう。だが一方で、これでは市場全体をますます縮小させてしまう。
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これまでの「営業効率化」では、例えて言うなら「刈り取り」ばかりで、稲を育てていない、土地を耕すことさえしていないことに、なってしまっている。これに気付けない営業マンが、現在ではほとんどだ。
■営業効率とは?
この「営業効率」という考え方について、自動車業界が取り入れ始めたのは35年ほど前であっただろうか。BMW正規ディーラーから整備の誘いが入った時、営業マンの一方的なトークが印象的だった。
それまでの自動車ディーラーの営業は「フツーに接する」と言って良い状態で、お客と信頼関係をきちんと築き、リピートしてくれることが前提で、さらに「紹介を貰える」ことを狙っていたものだ。
しかし35年ほど前、BMW正規ディーラーの整備の誘いでは、客側の都合に合わせようとするのではなく、余計な整備をさせようとする対応に変っていた。すなわち、「一本釣り商法」の様相を呈していた。
どちらにしても定期点検なので、筆者は整備を頼み、引き取りに行った。その時、「テールランプカバーの歪みが出ていたので交換しておいた」と言われ、詳しい説明を聞いた。その当時のBMW・325の持つ欠点があり、3~4年もすると歪んでしまってランプ交換ができなくなるものが出るとのことだった。
筆者は、「それはリコールではないのか?」と尋ねたが、「定期整備時に有償で交換している」とのことだった。「勝手なものだな!」と怒ったが、もめたくないので料金は払うことにした。本来は、3年や5年で歪んでダメになる部品ではない。だが危険がないと判断すると、「リコール隠し」はこうして行われることがあると知ったのだった。料金まで取って・・・!
そこまでは「かわいいもの」と言えなくもないのだが、その数日後、また営業マンから電話がかかってきた。さらに「追加の整備や部品の購入をしないかとの誘い」だった。まるで「コミッションセールス」の営業のようだったため、ディーラーの工場長を呼んで話をした。
すると、営業強化のため最近招いた顧問が、そのような営業方法を指導しているとのことだった。つまり、コミッションセールスのコンサルである。現在のところの「営業効率化コンサル」である。今ではすでに広く自動車ディーラーに浸透している考え方で、顧客の都合ではなく、セールス側の都合に合わせようとする「コミッションセールス」の世界の「一本釣り商法」だ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)