トヨタ・GRファクトリーはセル生産方式 (2) 「屋台」は「資金効率」を上げ、精度は職人芸
2020年10月9日 07:43
「セル生産方式(屋台)」の良さは、工程間の工数の差を気にする必要がなく、ボトルネックになる工程が前後の工程まで遅らせないこと。また中間在庫がないこと、必要に応じて生産台数を増減しやすいこと、立ち上がりが早く停止も早いこと、生産現場の面積が激減すること、運搬が少なくなることなどである。それはコストダウン、そして何より資金効率を大幅に向上できることである。
【前回は】トヨタ・GRファクトリーはセル生産方式 (1) 「造り方」に通じたジャーナリストを見かけない
しかしキヤノンなどのコピー機などの生産では、「屋台」は理想の生産方式であると言えるが、クルマの生産では最初から最後まで1人で組み立てを終わらせることは難しい。そこで、「屋台」のメリットである工程間の工数のバランスを取れることを活かし、ある程度の工程分割を行い、流れ作業としているのであろう。生産台数の少ない車種でもコスト上昇を招かないで済む生産方式である。
自動車の生産台数より2ケタ少ない建設車両のコマツでは、1人の組立工が44種の車種を組み立てられるそうだ。「セル生産方式(屋台)」によって、生産台数が少なくてもコストを下げることが出来るようにしている。これが、本来【GRヤリス「生産の秘密」とは】の答えであろう。
加工技術や組み立て技術に関して、【レーシングドライバーでも目隠しされたらわからない製品精度!】を実現するには、「セル生産方式(屋台)」でなくても当然に可能だ。精度に関しては、「職人芸と段取り」により確保していると言える。組み立てに一部ロボットを使っているのかもしれないが、基本は職人芸だ。「多種少量生産」つまり「混流生産」が実際に効くには、職人が多種の組み立てを出来るようになっていなければならない。
また、その「段取り」である「治・工具」が整備されていることが必要だ。これが、「精度」に対しては最重要となる。作業の段取りが良くなければ、精度にばらつきが出る。工程の組み方と、治具・工具の整備が噛み合わねばならない。つまり、「セル生産方式(屋台)」だから精度が高いわけではないが、これであればコストを下げて精度を上げ、株式会社の究極の目的である「配当」額を決める「資金効率」を上げることが出来るのだ。
【レーシングドライバーでも目隠しされたらわからない製品精度!】の確保は「セル生産方式(屋台)」だから出来るわけでもないが、商売になるコスト、言い換えれば株主が投資しても良い分野であると認め、かつ精度を出すことが出来るのは、「セル生産方式(屋台)」だからと言えるのだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)