「農業総研」は、流通改革で農業の底上げを図る
2020年9月25日 18:42
日本の農業の在り方が問われている。そうした中、2016年6月に東証マザーズに上場した農業総合研究所(以下、農業総研)は興味深い存在と言える。「(野菜を中心とした農作物の)流通面」から、農業という世界の活性化と取り組んでいる。一口で言うと、産地(農家)と(都市部の)スーパーマーケットをつなぐ流通プラットフォーム「農家の直売所」の展開。
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東京農業大学を卒業し一時は(ガス、及び関連製品の)専門商社に身を置いたが、創業者会長の及川智正氏は「農業が諦めきれず実家のキュウリ農家で3年間修業し、そのあと大阪で産直八百屋を立ち上げた。作ることと売ることを体験した」と入口を語っている。
では農業総研の目下の主業「農家の直売所」は何故、生まれたのか。及川氏の言を借りれば「既存の流通市場と、道の駅などの直売流通の中間的な存在。体験から試みて今日に至っている」。
キュウリ農家の時は、農協に卸していた。「大量生産・販売が可能。だがエンドユーザーの顔は全く分からない。そしてなんと言っても利が薄い。仮に100円で売られる作物なら、農家が手にできるのは30円程度。では農家の直売所の場合はどうか。現時点では販売所が限定的だから・・・が、都会のスーパーに毎日出荷できるので60円程度」。しかし、「いける」という感触は掴んでいるようだ。「割高な収入」が、口コミを中心に農家に広がり現時点で農業総研への登録生産者数は全国で約9000人。導入する小売店舗は約1600に至っている。
また農業総研の強みを、斯界に明るい向きは「農家が農作物の販売価格や出荷先を自身で決められる点にある」。どういうことか。農業総研はITを活用して「登録生産者が出荷した農作物の売れ行き」「ライバル農家がつけた価格」「スーパーが取り扱っている商品の売れ行き」などを生産者に提供することで、生産者側が「価格、出荷先」自分で決める枠組みをフォローしているのである。
いま「物流網の整備」に注力している。現在、農家から農産物を集める集荷場を全国93カ所に整備。トラックのチャーター便で毎日、スーパー等に配送している。が、93カ所のうち直営は24拠点。自前での拡充には限界がある。そこで執っているのが地元企業との提携による業務委託。
例えば「兵庫県では地元のバス会社」「長野・山梨では佐川急便の集荷場を活用」「四国では日本郵政グループ/北海道ではJALと連携」といった風に、である。集荷場の体制が整備しながら「登録生産者:まず約2万人に」「小売店舗数:約2200に」押し上げる方針を示している。
農業を、流通網改革で底上げしていく。注目したい企業である。(記事:千葉明・記事一覧を見る)