海は予想以上に多くの炭酸ガスを吸収していた 欧州宇宙機関の研究
2020年9月25日 15:36
海洋で吸収される炭酸ガス量を正確に求めることは、実は意外に困難な作業であった。炭酸ガスの吸収量が多いということは、地球温暖化を遅らせる効果が大きいということに直結するため、人類にとって海洋が吸収している炭酸ガスの導出は、実は重要な課題なのである。
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従来の技術では、観測船によって海水をくみ上げて測定を行うため、海洋の表面ではなく海面下数メートルの深さにおける海水温度で炭酸ガスの吸収量を求めていた。だが、実際には炭酸ガスの吸収反応は海水表面で起きるため、海水表面温度と海水をくみ上げる水深における温度の違いが、観測データに微妙な誤差を生じさせていたのだ。しかも、海水をくみ上げる際の水深はいつも同じとは限らず、様々な水深における海水採集とならざるを得ないことが、正確な観測の妨げにもなっていた。
欧州宇宙機関(ESA)が9月22日に発表した内容によれば、海水表面温度は塩分の濃度や炭酸ガスの溶解度、炭酸ガス吸収反応の安定性に影響を及ぼすため、温度誤差は無視できない存在であるとしている。そこでESAのプロジェクトでは、海洋表面の温度を正確に測定できる人工衛星による観測データを用いて、1992年から2018年までに海水からサンプリングされた膨大なデータに温度補正を加え、検証を試みた。
その結果、従来の測定によって見積もられていた海洋での炭酸ガス吸収量よりも、遥かに高いレベルの吸収量があることが判明したという。しかもその吸収量は、従来の見積もり結果と比べ約1.5倍の量に相当する。この量は人類が排出している炭酸ガスの約3分の1に相当するが、ESAの研究者たちは海洋における炭酸ガスの吸収能力に過大な期待をすべきではないと警鐘を鳴らしている。
この情報は、イギリスのNature Communications誌上に詳細な研究論文の全文が公開されており、従来の観測データの補正方法が具体的に示されている。それによれば、海洋表面における炭酸ガスの吸収反応は水面下100ミクロンの範囲内で起きており、この領域での溶存炭酸ガス濃度を正確に見積もるために海水温度の正確なデータが必要になるとしている。海水温度の正確な値は、人工衛星による赤外線観測データを用いることができるため、過去に蓄積された大規模なデータの再検証が可能になったわけだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る)