AI実用化の本道 走りながらガードレールの点検効率化 教師データは?
2020年9月20日 07:29
凸版印刷は、イクシス(川崎市)およびケー・エフ・シー(大阪市)と共同開発した人工知能(AI)を使い、ガードレール支柱の腐食を走行しながら点検できるシステムを発表した。まだ、利用できるのは高速道路のみのようだが、一般道路でも使えるシステムにするため開発を進めている。
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従来、ガードレール点検のためには交通規制をしていたが、この「ガードレール支柱腐食点検システム」と名付けられたシステムを使うと、動画を基に判定できるため、効率化に大きく寄与できるものと期待されている。
AIの使い道としては、顔認証なども含めて、広く「動画による判定」が進んでいるようだ。動画から状況把握を行うのだが、心配なのは「教師データ」をどのようにして得ているかだ。この場合は、ガードレールの外観から錆の進行を判定して修理の時期を予測する訳で、従来はベテランの職人が錆の程度などを判定していた。
だがこれまでの現場の判定基準について、動画と結び付けて判定したデータが存在しているのだろうか?このAIのシステム設計を思いついた時からデータ集めをしたのでは、データ量として足りず判定に信頼が持てない。
走りながら動画を取り、全支柱に番号を割り振り、腐食の程度を自動検出する。補修が必要なガードレールを見つけ出す基準は職人の勘によるところであったはずだ。今後、精度が検証されていくのであろうが、検証をするのにどの様なステップがあるのか、明確にしておく必要があるだろう。
高速道路だけでなく、今後一般道路や鉄道などに向けたシステム開発も視野に入っているようだが、道路の路面の補修時期や、橋やタワーなど構築物の点検、マンションやビルのシステムも考えられることで、それぞれの技術と掛け合わせて開発されるとメンテナンス費用は削減されるだろう。
さらに、ハザードマップに用いられたデータを基に、雨量などを考慮して、どのあたりに土砂崩れが発生するのかなどを動画で点検して、リアルタイムで判定できると災害防止に威力を発揮するだろう。
多くの社会インフラや建物の寿命が来る時期であり、このシステムの応用には期待が持てる。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)