紫外線による新型コロナ不活化を確認 中心波長222nmを30秒照射で 広島大
2020年9月10日 17:24
広島大学医学研究科のグループが、目や皮膚などの人体に与える障害が少ないとされる中心波長222nmの紫外線に、新型コロナウイルスの不活化効果がみられたと発表した。産業機械メーカー・ウシオ電機の紫外線装置「Care222」の有効性を示した成果であり、感染対策の裾野拡大が期待される。
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紫外線は、寄生体であるウイルスのDNAに作用しダメージを与えることから、感染症ウイルスの新型コロナに対して有望な不活化技術として注目を集めている。海外の研究では、太陽から放出される3種類の紫外線のうち、UVB(紫外線B波)に新型コロナの殺傷効果が高いことが証明されている。
国内でも、宮崎大学と医療機器メーカーが共同で行った実験により、市販の空間除菌消臭装置に採用される深紫外線LED(発光ダイオード)に、ほぼ100%の不活化効果が認められている。
そうした有効性の高さから、米国のクラスター地域などでは早くも紫外線の社会実装が進むが、普及拡大には課題が多い。
紫外線は消毒をする対象物に変化を与えない反面、UVBを筆頭に人の皮膚や眼球などの組織を傷付ける可能性が高い。固体に対するウイルスの殺傷効果も、紫外線が当たった物の表面に限られるなど、効率性が高いとは言い切れない。
そうした中、広島大の研究チームは、紫外線の波長に打開策があるかどうか着目した。同大の考察では、多くの紫外線照射機で使用される波長254nmは人体への障害性が多いという。一方で、254nmより波長域が一段階低い222nm紫外線は、複数の実験報告を踏まえ、人体の安全性が高く、用途も広いと見た。
ただ、新型コロナの不活化効果は不明だったため、ウシオ電機の紫外線照射装置「Care222」を用い、さしあたり不活化効果の立証に取り組むことにした。
実験では、200〜230nm領域でCare222の紫外線レベルを調整し、プラスチック上の乾燥した環境で照度0.1mW/cm2の220nmを新型コロナに照射し、不活化効果があるかを検討した。すると、10秒間照射で88.5%、30秒照射で99.7%の新型コロナ不活化が確認された。今後は、人がいる環境を対象に222nm紫外線の効果があるかを検証していく。
ただ、臨床試験に移行していく段階で、いくつかの課題を解消する必要性がありそうだ。220nmの波長域の紫外線は、UVC(紫外線C波)に該当するが、UVCの人体への到達は限定的で、局所感染しか適用できない可能性がある。
またウイルスは、照射を受け続けるほど、紫外線C波に対する耐性を高める傾向があり、長期間の使用には向かない。今回の実験で証明された222nm紫外線の実証性は、それらの課題を克服した後に認められるだろう。(記事:小村海・記事一覧を見る)