大戸屋HDの行く末を考える

2020年8月24日 09:18

 私は財経新聞:6月5日付けの企業・産業欄に、『大戸屋HDの創業者の長男は、果たして親父を超えられるか』と題する一文を投稿した。その稿でもそうだが、2015年に大戸屋ホールディングスの創業者:三森久実が57歳という若さで急逝した直後から、三森氏の従弟の窪田健一社長と三森氏の長男(智仁氏)の関係が悪化し、智仁氏が常務の席にまで就いていた大戸屋から退社したという「内紛劇」に興味はなかった。三森智仁氏のその後を調べて記した。

【こちらも】大戸屋HDの創業者の長男は、果たして親父を超えられるか

 だが今回、「大戸屋HDが、食品の宅配を手掛けるオイシックス・ラ・大地と業務提携」という報に接した折りに「ちょっと待てよ」と思った。

 周知の通り大戸屋HDは、(故三森夫人の三枝子氏、智仁氏から買い受けた)総発行株式比率約19%の株式を有するコロワイドの敵対的買収(TOB)に対峙している。ホームページに「お知らせとお願い」と題する一文が、7月吉日扱いで掲載されている。かい摘むとこんな内容だ。

 「コロワイドによるTOBは当社及び株主の利益にならないという観点から、社外取締役を含む全会一致で決議した」

 「公開買い付けに応募されないように、既に応募された株主は契約解除をお願いしたい」

 私が知らないだけだろうか。敵対的TOBを仕掛けられた企業がここまで露骨/公に株主に「お願い」をする例を知らない。また「経営方針の違い」として例えば「大戸屋:その町/客層に寄り添ったメニューを展開。画一的な生産体制では出せない、その町に求められるおいしさを提供」「コロワイド:セントラルキッチンで一括集中生産、出来る限り効率的に食品を工場で生産し、画一的な商品の提供を追求」といった具合に記されている。

 確かに大戸屋は故三森氏の手により1958年に池袋で「全品50円均一/50円食堂」として産声を上げ、爾来その町に沿った「味」を提供する「大衆食堂」として伸長してきた。

 だが前3月期は「6億4800万円の営業損失」、今期は計画未定で始まり開示済みの4-6月期は「14億4400万円の営業損失」。この凋落ぶりはコロナ禍、TOBだけでは説明がつかない。四季報も業績欄の見出しを【最悪期】とし「今期18億円の営業損失」と予想している。

 アナリストの多くが「現状では大戸屋の価格は、大衆食堂と呼ぶにはふさわしくないのが現実。ビジネスモデルの転換が必須。オイシックスとは単なる業務提携、資本提携まで踏み込んでいない。コロワイドに対する対抗策に過ぎない」と切って捨てる。傘下に「甘太郎(居酒屋)、牛角、かっぱ寿司を持つコロワイドはそもそもM&Aで成長してきた会社。TOBは当然の成り行き」とする見方が強い。

 コロワイドは8月25日を買い付け最終日としている。買い付け価格は3081円。結末は25日を待たなくてはならないが、本校作成中の時価2900円出入りを見る限りTOBは順調に進んでいるようにみえるが・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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