名大や三井化学、3Dマスクを開発 不織布使用量が従来の10分の1に

2020年8月11日 17:57

 名古屋大学大学院工学研究科は5日、三井化学および同大発ベンチャーのフレンドマイクローブによる3者で共同開発した新型マスク、「θ」が完成したことを発表した。

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 3Dプリンタを活用しているθは、マスクの本体部分が樹脂製となっており、洗浄すれば何度も使用可能。マスクの形状に工夫を凝らすことで、不織布使用量が従来の不織布マスクと比べて10分の1に抑えるなど、環境に配慮している。

 新型コロナウイルスの感染を防ぐために、家庭や医療現場で欠かせない存在となったマスク。天然素材のコットン(綿)マスクや布製マスクと比べて、ウイルス除去効果が高い不織布マスクが感染症対策に使われている。

 不織布マスクは様々な種類があるが、家庭用向けのマスクは、繊維を熱風で吹き付けながら絡ませて作る「メルトブローン法」により生産される不織布を使う。このタイプの不織布は、極細の繊維(2~3μm)に帯電処理が施され、高い精度でウイルスや各種粒子を吸着する機能を持つ。一方で、液体に濡らすとウイルスの補集効果が減るため、再利用できないデメリットがあった。

 そんな中、名大と、マスク用フィルターの不織布を生産供給する三井化学、微生物関連ビジネスのフレンドマイクローブの3者で、新型マスクの開発に取り組むことにした。3者はかねてより、不織布マスクの研究に取り組んでおり、それぞれが持つ知見を結集させ、高性能のマスク開発を狙った。

 まず設計段階で、3D(3次元)CADの設計データを基に、立体モデルを製作する3Dプリンタを使用。マスクを人間の顔の形状にフィットする3次元構造に設計することで、皮膚への接触面積を小さくし、体感的なストレスや蒸れ、化粧転写を最小限に抑えた。

 国内では、川崎市のIT企業「イグアス」が、3Dプリンタで出力可能なマスクのデータを無償公開するなどしているが、実際に3Dマスクの製品化に辿り着いたのはθが初めてとみられる。

 再利用ができないことから、使い捨てによるゴミ問題が顕在化している不織布に関しては、再使用するマスク本体と使い捨てのフィルターに分けた上で、マスク本体に生分解性樹脂(PLA)を導入することで対応。本体部分へのPLA導入は、洗浄などの衛生管理を容易にし、使い捨てとなる不織布使用量を従来比10分の1に抑えることを実現した。

 フレンドスコープがθの販売業務を担い、8月7日からクラウドファンディングサイトのMakuakeにて先行予約販売の受付を始めた。まだ試験販売の段階だが、改良を加えた上で、顔の大きさなどに応じた複数タイプのマスクや、個人の顔に合わせたオーダーメイドマスクの販売も計画しており、量産体制の構築を目指す。(記事:小村海・記事一覧を見る

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