初期の太陽系、内周小惑星破片が木星軌道を超えて外縁部にまで移動か

2020年8月7日 08:04

 誕生したばかりの太陽系では、現在の木星公転軌道付近に大きな隙間が存在していた。これは太陽系が誕生しておよそ100万年後に木星のコアが形成されて、その周辺にある物質が吸い寄せられたことに起因すると考えられている。

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 この時に太陽系にできた隙間のことを、学会ではジュピターギャップと呼んでいる。つまりこのころの太陽系はジュピターギャップを境にしてより内周側の構造と、それより外周側の構造に分化が起きたと考えられている。

 ジュピターギャップの内側では水星、金星、地球、火星といった比較的小さな岩石惑星が誕生した。そしてジュピターギャップの外側では天王星、海王星といった大きなガス状の惑星が誕生し、さらにその外縁部には彗星の故郷となっているエッジワース・カイパーベルトやオールトの雲と呼ばれる領域が広がっている。

 これまでの常識では太陽系の内側の領域と外側の領域では明白な違いがあり、現在それらの空間に存在している天体の起源となる成分は、すべてもともとその領域にあった物質に起因するものと考えられてきた。

 だが、この常識を覆す論文が、8月初めにオランダの科学ジャーナルGeochimica et Cosmochimica Actaで公開された。この論文はスミソニアン研究所の国立自然史博物館、ハワイ大学マノア校、セントルイスのワシントン大学、ハーバード大学の科学者も含む研究チームによるスターダストと呼ばれるプロジェクトチームによるもの。

 チームは、世界各地で収集、保管されているコンドライト隕石サンプルの化学成分と酸素同位体の組成を調べた結果、太陽系誕生初期に太陽系内周部に存在していた小惑星破片が、実は太陽系外周部にも移動をしていた可能性があることを突き止めたのだ。

 コンドライト隕石は、UOC、CR、CMの3つに大きく分類され、UOCはごく一般的なもので、CRとCMは炭素を多く含む。従来これら3つはすべて酸化鉄を多く含むものと、酸化鉄が少ないものに分類されると考えられてきた。しかしながら、この研究ではUOCとCMの一部にこれが成り立たず、異種の物質が混合しているものがあることを突き止めたのだ。

 このことはUOCとCMの一部が太陽系内周部で発生して、太陽系外周部に移動し、現在のような化学組成となったことを意味しているのだという。つまり、太陽系誕生直後に内周部で起きていた岩石系微惑星同士の衝突で飛び散った破片が、太陽系外周のはるかかなたの領域にまで到達し、約50億年後に人類が隕石の分析によってその事実を突き止めたというわけだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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